【医師監修】「掻けば掻くほど、かゆくなる」の正体とは?

更新日: 投稿日:
監修者プロフィール
相談科:
  • 皮膚科
専門領域:
  • 皮膚科
水野みずの 京子きょうこ先生
2014年よりアメリカに移住。日本では、皮膚科全般、特にアトピー性性皮膚炎や乾癬、蕁麻疹、ニキビが専門で、赤ちゃんから老人まで幅広い診療経験を持つ。現在はホリスティック医療を学び、人が本来持っている治癒力を引き出す「ポジティヴへルス」という考え方を取り入れ、真の意味で健康になるための医療相談を行っている。皮膚のトラブル、慢性的な肌の悩みや市販薬のことなども相談できる。

「かゆいから掻く」これは誰もが無意識にしてしまう、ごく自然な行動です。
虫刺され、乾燥、あるいはちょっとした湿疹など、日常生活で「かゆみ」に悩まされる場面は多いものです。掻いた瞬間は少し楽になり、「これで落ち着くかな」と思うこともありますよね。
ところが、しばらくすると、さっきよりも強いかゆみに襲われる。そんな経験はありませんか?

実はこれ、気のせいではありません。
皮膚科学の世界ではよく知られた現象で、この状態を「かゆみ-掻破(そうは)サイクル」と呼びます。
なぜ、掻くほどにかゆみは強くなってしまうのでしょうか。
そして、どのような場合に注意が必要なのでしょうか
今回は皮膚科医の視点から、以下の3点を中心に分かりやすく解説します。

・なぜ、掻くとかゆみが強くなるのか
・かゆみが続くときに考えられる原因
・悪化させないためのセルフケア

1. かゆみは「皮膚」だけの問題ではない

かゆみは、単なる皮膚表面の刺激ではありません。実は、「神経と脳」が深く関係している感覚です。
皮膚が乾燥したり炎症を起こしたりすると、体内ではヒスタミン、サイトカイン、神経ペプチドといった物質が放出されます。
これらが皮膚にある「かゆみ専用の神経(C線維)」を刺激します。(かゆみ専用というと語弊があるように感じます。『神経線維(C線維)』とだけいう方が良いように感じます。)
刺激された信号は、脊髄を通って脳へ伝わり、そこで初めて私たちは「かゆい」と認識します。
つまり、かゆみは「皮膚 → 神経 → 脳」という経路で感じる感覚なのです。

2. 掻くと「一瞬だけ楽になる」理由

掻いた瞬間に、かゆみがスッと引くように感じることがあります。
これは、掻く刺激が「痛みの神経」を刺激するためです。
脳には「痛み > かゆみ」という優先順位があるため、掻くことで生じた軽い痛みが、かゆみの信号を一時的にブロックしてくれるのです。
しかし、この「偽りの安らぎ」は長くは続きません。

3. 恐怖の「かゆみ-掻破(そうは)サイクル」

掻く行為は、皮膚の炎症を悪化させる要因になることが知られています。
掻くことで皮膚には細かな傷がつき、バリア機能が破壊されます。
すると、アレルゲンや刺激物が皮膚へ容易に侵入するようになり、わずかな刺激で神経は反応し、さらなる炎症物質が放出されやすくなります。(神経はより過敏に刺激されます。)

「かゆい」→「掻く」→「炎症が悪化」→「さらにかゆい」

これが、皮膚科で最も警戒される「かゆみ-掻破サイクル」です。この悪循環が続くと、皮膚がゴワゴワと厚くなる「苔癬化(たいせんか)」という状態を招き、治癒がさらに難しくなります。

4. 海外生活で「かゆみ」が増える理由

海外生活において皮膚トラブルを経験する日本人は少なくありません。
大きな要因の一つとして「乾燥」があります。

・乾燥した気候や暖房による湿度の低下
・硬水(ミネラル分の多い水)による皮膚の刺激
・現地の洗剤やボディソープの強い脱脂力

これらは皮膚のバリア機能を著しく低下させます。
バリアが弱まった皮膚は外部刺激に弱くなり、普段なら気にならない程度の刺激でも、強いかゆみを感じやすくなってしまうのです。

5. なぜ夜になると激しくなるのか?

「日中は平気なのに、夜になるとかゆみが我慢できない」という方は多いでしょう。
これには体内のリズムが関係しています。
夜間は体温が上がり、血流が増えることで皮膚の感覚が敏感になります。
また、心身がリラックスすることで、意識が自分の体の感覚に向きやすくなることも要因です。
これはアトピー性皮膚炎、乾燥性湿疹、蕁麻疹などによく見られる傾向です。

6. 悪化させないためのセルフケア

かゆみがあるときは、まず「皮膚のバリアを守ること」が最優先です。

・入浴後すぐに保湿する
・熱すぎるお湯を避ける(ぬるま湯が理想)
・長湯をしない
・低刺激の洗浄剤を使い、洗いすぎない
・無意識に掻かないよう、爪を短く整える

どうしてもかゆい時は、「掻かずに冷やす」のが有効です。
冷たいタオルなどで軽く冷やすと、神経の興奮が鎮まり、かゆみが和らぐことがあります。

7. 医師に相談すべきサイン

「ただのかゆみ」と侮ってはいけません。
以下のような場合は、早めに医師へ相談しましょう。

・かゆみが 1週間以上続いている
・湿疹や赤みが 広がってきた
・夜眠れないほどかゆい
・市販薬を使っても 改善しない
・皮膚が 硬く、厚くなってきた

こうした状態を放置すると、掻くことで皮膚の炎症がさらに悪化し、湿疹が慢性化してしまうことがあります。
皮膚が厚くなる「苔癬化(たいせんか)」と呼ばれる状態になり、治療に時間がかかるケースもあります。
また、かゆみの背景には接触皮膚炎(かぶれ)や真菌感染(カビ)、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患が隠れている場合もあります。
「そのうち治るかも」と我慢せず、症状が続く場合は早めに医師に相談することが大切です。

海外にいると、「病院に行くほどではないかもしれない」と我慢してしまいがちです。
しかし皮膚トラブルは、早めに原因を整理することで悪化を防ぎやすい症状でもあります。
ヨクミルでは、日本の皮膚科医にオンラインで直接相談が可能です。
日本語で現在の症状を伝え、「様子を見てよいのか」「現地で受診すべきか」を整理することができます。
気になる症状がある場合は、早めに医師へ相談してみてください。

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