
「マッサージに行ってもすぐに戻ってしまう」「強く押してもらうほど、逆に痛みが増す気がする」そんな経験をしたことはありませんか?
実は、肩こり・腰の重だるさ・全身の疲労感がなかなか取れない背景には、「筋膜(きんまく)のこり」や「関節の動きの悪さ」が隠れていることがあります。
・強いマッサージなのに効かない
・揉み返しが起こりやすい
・ほぐしてもすぐ元に戻る
このような方は、一度「筋膜」や「関節の可動域」を疑ってみる価値があります。ではなぜ、強いマッサージでは疲れが取れないことがあるのでしょうか。そして、医学的にみるとどんなアプローチが効果的なのでしょうか。
整形外科医の東山礼治先生に「筋膜のこり」によって疲れが取れにくくなる仕組みと、医学的に正しいケアの方法について詳しく解説していただきました。
さらに「どうすれば根本的に疲れにくい体になるのか」もお伝えします。
1. 「強い刺激 = 効く」は、間違い?疲れが取れない理由
高い熟練を要する技術をもってしても、疲れや関節の固さ(関節拘縮、関節可動域の低下)・筋肉のコリ(筋緊張)が取れないこともあります。
マッサージに行ったことがある人は多いかもしれません。マッサージの力だけで分類すると、力強くマッサージを受けるもの、触られているかどうか分からないほどの弱い力で優しくマッサージを受けるものまで様々なものがあります。
強いマッサージを受けると愜意になるという方も一定数おりますので、好みで選んで構わない部分がありますが、医学的な見解で言うと、強い刺激で筋肉を押されると筋損傷を起こす危険があります。
スポーツ選手をMRI検査したときに、前日のマッサージ部位の筋肉に内出血を偶然認めたこともあります。
筋損傷を与えてしまうとさすがに“パフォーマンスが向上するためのマッサージ“とは言いにくいです。
そして「マッサージしても疲れが取れない」という現象はこの強いマッサージで疲れが取れないということが多いようです。
「筋膜のこり」が原因の疲れは、強くマッサージすると逆に筋肉の微細な損傷と炎症反応が出てしまい、いわゆる「揉み返し」が起きてしまうことがあります。
とても弱い力を関節に与えて特有の神経を作動させ、周囲の筋緊張をとって和らげ、関節の運動を正しくするような徒手療法「AKA博田法」もあります。
ヒトの身体の不思議な反応です。弱い力でマッサージすれば良いと言っても、その技術を習得することには長い年月を要する意外と難しい技術であるという特徴もあります。
病院のリハビリの現場では、強い力でのマッサージではなく「AKA博田法」のような弱い力での徒手治療を用いることが多いです。
2. 【違いと役割】筋膜リリース/ AKA博田法/ ハイドロリリース

最近、「筋膜リリース(筋膜はがし)」という手技が流行っております。
長時間のデスクワークや運動不足が続くと、筋肉が凝り固まり、筋繊維を覆っている「筋膜」が筋肉同士や皮膚と癒着してしまうことがあります。
その筋膜の癒着を解消し、血流を促進する手法です。柔軟性の向上や肩こり腰痛の軽減、姿勢の改善、心身のリフレッシュの効果があると言われております。
筋肉にアプローチする筋膜リリースですが、先ほどの関節にアプローチする「AKA博田法」でも筋肉の癒着が取れて、関節と筋肉がよく動くようになりますので、効果が得られればどちらの手法でも良いと思います。
医療機関では超音波エコーを使用して筋膜や周辺組織を正確に確認しながら、生理食塩水を筋膜に注入して治療を行う注射方法(ハイドロリリース)も行われるようになってきました。
この治療では皮膚の上からマッサージするのではなく、直接的に注射により筋膜の癒着を剥がし、筋肉の動きを改善させるため、理論的には筋膜リリースよりも効果を期待できます。
筋膜だけでなく神経の癒着を改善する作用もあると言われています。注射する液体は生理食塩水なので、注射による侵襲は若干ありますが、神経に注射する神経ブロックに比べると安全性が高いことも特徴です。
「AKA博田法」を習得されたセラピストであれば、ハイドロリリースと同程度の効果を出せるし、注射が不要なので「AKA博田法」の方が安全だとおっしゃるかもしれません。
3. 受け身の治療だけでは改善しない
ここでお伝えしたい事実を一つ。
上手な徒手療法も上手な筋肉マッサージも上手な注射療法も、受け身の治療です。
残念ながら、受け身の治療では筋力は向上しない、正しい動作の習得にはつながらないということです。
自分で筋肉を動かさないと筋力はつきません。この事実を忘れてしまって、「寿命」という大切な限られた時間を受け身の治療ばかりに使用してしまうと筋力は失うばかりです。筋力をつけるために能動的にトレーニングする時間も必要です。
日本整形外科学会では以前からロコモティブシンドローム(通称、ロコモ)という概念を提唱し、二本足で歩けるための筋力を維持することの重要性を伝えております。
寝ている状態から立ち上がって生活するためには、まず自分の筋力で立ち上がる必要があります。立ち上がるための筋力がなくなってしまうと「寝たきり」になってしまう訳です。
スクワットや片脚バランスなどのトレーニングを推奨しております。
医療の現場では、ロコモ(筋力不足)から姿勢の不良、筋肉の緊張(筋膜のこり)となっている場合もとても多く、「筋膜リリース」は結果の治療であって原因の治療になっていない場合があります。

4.トップアスリートたちが愛用した、世界で唯一のトレーニング法
共縮(共同収縮)を防ぎながら行うトレーニングによって筋肉と関節が柔らかくなり関節可動域が広がる初動負荷トレーニング®(B.M.L.T.®と略します)というものがあります。
このトレーニングの特徴は短い紙面では語り尽くせないほど効果が多岐にわたることです。全身の筋肉(筋膜含めて)が柔らかくなることだけではありません。
B.M.L.T.カム®(通称、カム)という国際特許を取得している部品がハンドルやペダルに付属しており、腕や脚をひねりながら行う3次元動作のトレーニングマシン(通称、カムマシン)です。
とくに野球界では多くの選手が愛用しており、現在プロ野球12球団のうち9球団が練習場やスタジアムに配置していることは野球ファンの間でも意外とあまり知られておりません。
最近ではドラフト1位指名された高校球児がB.M.L.T.®で急速が20kmも速くなったとニュースになりました。
全身の筋肉や関節が同時に柔らかくなり、かつ運動連鎖という力の伝達が即効性に改善するため、トレーニング直後から動作が改善して筋力がアップします。
錘(おもり)は軽くても効果が得られ、筋肉痛が出ないことも常識を覆している点です。脳~神経~筋肉の活動が改善し、主働筋と拮抗筋が同時に働いてしまう「共縮」という悪い状態を防ぎながらトレーニングできる世界で唯一の運動と言えます。
多くのトップアスリートを指導してきた実績のある小山裕史博士が開発した「カム」が動作中の加速度を変化させ、特別な効果を発揮します。
最近はカムマシンに形だけが似ている「カム」の無い3次元動作のマシンが散見され、誤解して購入されてしまう事例がありますので注意が必要です。
カムマシンは認定された指導提携施設(ワールドウィング®という名前のスポーツジムか、認定されたクリニックや病院などの医療機関)だけにあるので、どこでも受けられるサービスではありませんが、子供の成長痛の予防、アスリートの競技力向上、高齢者の健康維持、生活習慣病、パーキンソン病、脳卒中後のリハビリなどにも有効のため、医療施設・介護施設に今後広がっていくことが期待されます。また、最近新しいカム 「Moving pivot®」が開発され、各提携施設への導入が始まっております。

5. まとめ
「強くマッサージしても疲れが取れない」ものは「筋膜のこり」が原因かもしれません。
筋膜リリース、AKA博田法、ハイドロリリースで筋肉は柔らかくなりますが受け身の治療なので、筋力は改善しません。
ロコモにならないようにするためにはスクワットのように自分でトレーニングする必要があります。
もし身近にあれば「初動負荷トレーニング®」を試してください。
6. このような方は、医師に相談しましょう
肩こり・腰痛・慢性的なだるさが続く場合、「筋膜」や「関節の動き」が原因になっていることもあります。
セルフケアで改善しない、同じ症状を繰り返すときは、整形外科の専門医に相談することで、適切な治療や運動のアドバイスを受けることができます。
不調をそのままにせず、ぜひ早めにご相談ください。



