「風邪かな?」と思っていた咳が、2週間以上も続く——。メディアでも度々取り上げられていますが、現在日本では、こうした“長引く咳”の症状を訴える人が急増しています。実はその背景にあるのが、百日咳の流行です。全国の累計で22,000例以上が報告されており、例年を大きく上回るペースで拡大しています。今回は、百日咳とはどんな病気か、何に気をつけるべきかを、呼吸器内科の先生に解説してもらいました。
百日咳の特徴と見分け方
百日咳は、国立感染症研究所の発表によれば、2025年は年始から3月末までの12週間で4,200例超が届けられており、すでに前年(2024年)の年間報告数(約4,000例)を超えています。感染者の多くは0歳〜10代の小児・若年層ですが、家庭内での感染拡大も目立っており、大人も油断できない状況です。
百日咳とは?
百日咳は、「Bordetella pertussis(ボルデテラ・パートゥシス)」という細菌によって引き起こされる、急性の呼吸器感染症です。名前の通り、咳が長期間(数週間〜数ヵ月)にわたって続くのが特徴で、とくに乳児では重症化しやすく、命に関わることもあります。一見すると「子どもの病気」のように思われがちですが、成人や高齢者でも発症することがあり、むしろ軽症の大人が家庭内で広めてしまうケースが少なくありません。
百日咳の代表的な症状
初期は、通常の風邪と区別がつきにくく、軽い咳・くしゃみ・微熱などが数日から1週間ほど続きます。その後、夜間に悪化する発作的な咳が出始め、次第に強くなっていきます。特徴的な咳のパターンは下記のようなものです。
• 息を吐ききったあと、「ヒューッ」と音を立てて吸い込む(笛声)
• 咳き込みすぎて嘔吐してしまう
• 夜中に咳で何度も目が覚める
• 咳以外に目立つ症状がないのに、2週間以上続く
こうした症状が見られる場合は、百日咳の可能性を疑い、医療機関への相談を検討しましょう。
家庭内でできる百日咳の予防策
百日咳は飛沫感染で広がるため、日常生活の中での予防がとても大切です。実践的な予防策を紹介します。
1. 咳・くしゃみのエチケットの徹底する
• 咳が出る人は必ずマスクを着用
• 咳やくしゃみはティッシュや肘の内側でおさえる
• 使用済みのティッシュはすぐに廃棄し、手指の消毒も忘れずに
2. 手洗い・うがいの習慣化
• 外出後や食事前後、咳・くしゃみのあとには石けんを使った手洗いを徹底
• 家の中でも手すりやドアノブなど共用部分の消毒が効果的
3. 室内の換気を定期的に行う
• 1〜2時間おきに窓を開けて空気を入れ替える
• 空気清浄機もあわせて活用すると、より効果的
4. 栄養と睡眠で免疫力を維持する
• バランスの良い食事を心がけ、特にビタミンCや亜鉛、たんぱく質など免疫に関わる栄養素を意識
• 夜更かしを避け、十分な睡眠と適度な運動で体調を整える
• 水分補給も忘れずに
5. 体調不良者との接触を最小限にする
• 家族に強い咳症状がある場合は、部屋を分ける・マスク着用を徹底
• 特に乳幼児や高齢者がいる家庭では、接触をなるべく避ける工夫を
6. 咳が続く場合は、放置しない
• 「ただの風邪」と軽く見ず、早めに医師に相談を
• 抗菌薬の早期投与で重症化を防げる場合もある
咳が続くとき、どうしたらいい?
百日咳は、大人では比較的軽症で済むことが多いため、見過ごされやすい病気です。しかし、咳が長引いている間に、家庭内で小さなお子さんや高齢者に感染させてしまうリスクがあります。「誰が感染源になったのか分からない」まま、家族の中で重症化するケースもあるため、“家族全体での早期対応”が何より大切です。
気になる症状があるとき、受診の目安が分からないときは、ヨクミルで日本人医師に相談してください。早めに相談することで、重症科のリスクを回避できます。



