【医師監修】10人にひとりが発症する地域もある「冬季うつ病」とは?!

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日本では、ようやく猛暑から解放され、過ごしやすくなってきました。しかし、秋になって日が短くなると、「もの悲しくて、何もやる気がしない・・・」という人も多いと思います。もしかしたら、それは「冬季うつ病」かも知れません。日照時間が関係しているので、四季のある日本だけでなく海外で暮らしている方も多く発症している病気です。ただ元気が出ないだけと放置しないで、早めに予防することが重要です。今回はこの「冬季うつ病」について、医師に解説してもらいました。

居住地域によって発症率が異なる病気

精神科医のノーマン・ローゼンタール氏は、1984年に発表した論文で「冬季うつ病」を初めて科学的に「季節性感情障害(SAD)」と命名しました。南アフリカから米ニューヨーク市に移住したローゼンタール氏は、寒くて日が短い冬の間、母国にいたときよりも気分が落ち込むことに気づいたのです。「冬になると誰もがそんな気分になる」と見過ごされ、治療可能な病気と捉えていない人が多いのですが、日が短くなることで発症するうつ病の一種だと定義されました。

その後の研究により、SADにかかる人の割合は住んでいる地域によって異なることが分かってきました。米国立医学図書館の情報サイトによると、全人口の0.5〜3%がSADにかかるとされていますが、1990年にローゼンタール氏が発表した論文によると、米国では高緯度地域の方がSADになる人の割合が高く、北東部のニューハンプシャー州では10%にのぼると報告されています。
日本でも九州や近畿では少なく、東北や北陸などの日本海側に多いとみられています。名古屋大学などが発表した調査では、北海道や秋田では3~4%台と高く、大阪や名古屋は1%未満でした。また、若い女性に多い症状であること、お子さんも発症することが分かっています。

海外生活では、母国の生活とは異なる環境的な要因に加え、今回示唆したような季節性要因が心身に影響があると考えられています。特に高緯度地域や日照時間の少ない地域では、季節性の要因も考慮したメンタルヘルス対策が必要です。
2013年に米国精神医学会がまとめた診断基準によると、SADは繰り返し発症する「反復性うつ病」の一種で、特定の時期に発症し、その時期を過ぎると軽くなるか、うつとは逆の躁(そう)状態になります。直近の2年間で2回発症し、ストレスなど他の要因がなければSADと診断するとされています。

季節性感情障害(SAD)の主な症状は?

SADになると、一般的なうつ病と同じように「気分が落ち込む」、「疲れやすい」、「何をするにもおっくう」などの症状がありますが、明らかに違うのが「睡眠」と「食事」です。一般的なうつ病は「不眠」の症状が多いのに対し、SADは「眠気が強くなる」、「寝過ぎてしまう」といった症状があらわれます。
また、一般的なうつ病だと、食欲がなくなり体重が落ちることが多いですが、SADは、「カロリーの高いものが食べたくなる」、「炭水化物や甘いものを食べ過ぎる」など、過食になり体重が増える傾向があります。他の動物のように、厳しい寒さを乗り越えるためエネルギーを蓄える行動に出るのです。眠気が強くなったり、カロリーの高いものが食べたくなったりするのはこのためです。
さらに、日照時間が短くなると、意欲を高める作用などがある「幸せホルモン」と呼ばれる脳内の神経伝達物質「セロトニン」が作られにくくなります。そのため体内時計が乱れて、「シャキッと起きられない」、「意欲が湧かない」といったことが起きやすくなります。

セロトニンを増やすことが改善と予防に!

自分でできる最も手軽な対策は、日光を浴びることです。できるだけ毎日同じ時間に起床し、朝の光を浴びるようにしましょう。日光には、「セロトニン」の分泌を増やす作用があると言われています。できれば毎朝1時間ほど散歩をするのが理想です。曇りの日でも、自然光は気分を上向かせてくれます。1時間の散歩が難しい場合は、朝の通勤時、昼、午後など、1日の合計で1時間以上になるように日光を浴びるようにしましょう。
また、セロトニンを増やすには、体を動かすことも有効です。筋トレやマラソンなど体への負荷が大きな運動ではなく、ストレッチやヨガ、ウォーキングなど心地よいと感じられる程度の運動が最適です。散歩の時間が取れない場合は、通勤や通学時に少し早歩きをする、階段を使うようにするなどの工夫をしてみましょう。
また、バランスの良い食事も、病気の改善と予防に役立ちます。おすすめは「トリプトファン」という必須アミノ酸が含まれている食材で、マグロ、肉類、大豆製品、乳製品、バナナ、ナッツ類などです。トリプトファンは、セロトニンの分泌を助けると言われています。朝食に、ナッツやバナナを加えたヨーグルトを食べるなど、手軽に取り入れられるものから試してみましょう。

上記で紹介したような症状がある、どうしても気分が落ち込んでしまう、睡眠や食欲に異常があるなど、気になることがある場合は、我慢しないでヨクミルで医師に相談してください。ストレスを溜めることが体には良くないので、辛い気持ちを友達に話すように日本人医師に聞いてもてもらうと、気持ちが楽になりますよ。

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監修者プロフィール
相談科:
  • 小児科
  • 精神科(メンタルヘルス)
  • 総合診療科
専門領域:
  • プライマリケア
  • 総合診療科
楠元くすもと 恭子きょうこ先生
心身を総合的に診るプライマリケアが専門で、オーストラリアと日本を行き来しながら、様々な年齢の悩みの相談に応じています。どんな病気の可能性があるのか、市販薬や処方薬の質問など、心と体の気になることがありましたら、気軽に相談してください。
著者アイコン 著者プロフィール
中野なかの 紗瑛さえ
文具メーカーでプロダクトマネージャーを担当後、システム開発販売会社で販売促進やイベント企画を経験。その後、フリーのプランナー・コピーライターとして、商品企画と販売促進全般、店舗、経営者、政治家、医者などの取材、ライティングを数多く手がける。2021年より、YOKUMIRU株式会社のブランディングマネージャーに就任。医療、健康、美容、飲食系のライティングを得意としている。
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