今回の記事では、そんなオーストリアの基本的な情報と医療事情についてお伝えします。
目次
オーストリア共和国の基本情報
華やかな宮廷文化と芸術
変化に富んだ地形が織りなす絶景
オーストリアは、中央ヨーロッパの南部に位置する連邦国家で、北はドイツとチェコ、東はハンガリーとスロバキア、西はスイスとリヒテンシュタイン、南はイタリアとスロベニアの8ヵ国に囲まれた内陸国です。
正式名称はオーストリア共和国、首都は国土西部に位置するウィーン(Vienna)です。国土面積は、北海道とほぼ同じ大きさの約83,900平方km。そのうち約3分の2をアルプス山脈が占め、切り立った雪山や氷河、緑深い渓谷をはじめとする変化に富んだ地形が織りなす絶景と、山腹の牧草地など豊かな自然に恵まれた国です。自然だけでなく、華やかな宮廷文化、ヨーロッパらしい建造物が立ち並ぶ素敵な街並み、美味しい郷土料理の数々など、表情豊かな魅力をいくつも兼ね備えているのが特徴です。
紀元前2世紀頃、この辺りに住んでいたとされるケルト人が国家を築いたことから始まり、約500年におよぶローマ帝国による支配と、約640年間にわたり続いた、ヨーロッパ随一の貴族ハプスブルク家による統治を経て現在に至ります。先史時代やローマ時代の遺跡、ハプスブルク家ゆかりの建造物など、歴史的な見どころを多く有することで知られています。
13世紀後半からこの地を支配したハプスブルク家は、フランス王妃となったマリー・アントワネットに代表されるように、ヨーロッパの王室間の姻戚関係を通して大きな影響力を持ってきました。第一次世界大戦に敗れてハプスブルク家の帝国は崩壊し、第二次世界大戦時はナチスドイツに併合されました。戦後は米英仏ソの4ヵ国の分割占領を経て、1955年に永世中立国として独立を回復しました。
オーストリアの総人口は約892万人で、在留邦人は、3,140人(2020年10月1日現在)です。そのうち約98%がドイツ語を母国語としています。そのほか、国土南部および東部にはオーストリア政府から認定された6つの少数民族が居住しているため、クロアチア語、ハンガリー語、チェコ語、スロバキア語、スロベニア語なども話されています。宗教は、カトリック約64%、プロテスタント約5%、イスラム約8%です。
モーツァルトが生まれた芸術の都で
無形文化遺産のカフェ文化を楽しむ
首都ウィーンはドナウ川流域の盆地にあり「芸術の都」として有名です。18世紀を代表する音楽家のモーツァルトも、ここウィーンで天才的な音楽の才能を発揮し、ピアニスト、作曲家として名声を博しました。また、ウィーンには、IAEA(国際原子力機関)やUNIDO(国連工業開発機関)など国連諸機関の本部が置かれ、オーストリアは国連の平和維持活動に積極的に取り組んでいます。1995年にEUに加盟しました。
オーストリアは、東アルプスからドナウ川流域にかけて広がる9つの州から構成されています。アメリカのように州で法律が異なるほど権力は強くはありませんが、国民の出身州に対する誇りはとても強いとされています。
ウィーン州 | 東側に位置する首都ウィーンがあるもっとも小さな州で、人口の約5分の1を占める世界有数の都市。UNESCO無形文化遺産に登録されているカフェ文化やシェーンブルン宮殿の美しさを味わい、オペラ座で音楽鑑賞もできる。 |
ニーダーエスタライヒ州 | 広大で豊かな自然の中に村が点在して、ヨーロッパの美しい田舎町を堪能できる。 |
オーバーエスタライヒ州 | ドナウ川に沿った美しい街リンツが州都。『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台となった山や湖に恵まれた地域。 |
ブルゲンランド州 | 世界遺産にも登録されている美しい湖と、中世の面影を色濃く残す小さな街が多いエリアで、ワインの産地としても有名。 |
シュタイアーマルク州 | 世界遺産に登録されているグラーツの旧市街地がある。州都グラーツは2番目に人口の多い街で、古き良きヨーロッパを感じられる。 |
ザルツブルグ州 | 誰もが知るモーツァルトのふるさと。生家や居住地など、ゆかりがある場所をめぐることができる。 |
ケルンテン州 | イタリア北部とスロベニアと国境を接する静かな州で、湖が多い山岳地帯。避暑地や保養地として知られる。 |
チロル州 | アルプスの少女ハイジを現実にしたような美しい景色が広がる。ピクニックやハイキングなどでのんびり過ごしたい。 |
フォアアールベルク州 | ドイツやスイスからのアクセスも抜群のエリア。こちらも美しい山岳地帯が広がりハイキングにぴったり。 |
日本とは伝統的な友好国
音楽分野を中心に活発に交流
日本とは伝統的に友好的な関係で、1869年に修好通商航海条約を締結して、外交関係を樹立(当時はオーストリア=ハンガリー二重帝国)しました。1955年のオーストリアの永世中立国の宣言に対して、我が国は最初に承認を行いました。2019年、日本オーストリア友好150周年を迎えました。
日本はオーストリアにとって、アジア第2位の貿易相手国です。主要貿易品目は、輸送用機器、一般機械、電気機器(2018年)などを輸出しています。
音楽分野での交流が活発で、世界的に有名なウィーン少年合唱団やウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、定期的に日本公演を実施。ウィーン市立音楽芸術大学等において多くの日本人留学生が音楽を学ぶ他、著名な日本人音楽家がオーストリアを拠点として活動しています。
近年は、漫画等の日本のポップカルチャーの影響を受けた学生が日本語を学習し始めるケースも多いです。オーストリアで唯一、日本学科を有する「ウィーン大学日本学科」には、毎年約200名(副専攻を含む)の学生が入学しています。一方で、日本の伝統文化や武道等に関心を持つオーストリア人も少なくなく、寿司や抹茶、ラーメン等の日本食もブームとなっています。
参考:オーストリア政府観光公式サイト
オーストリアの医療事情
衛生状態や医療事情は良好だが
覆面禁止法など独自のルールに注意
オーストリアでは覆面禁止法*が2017年10月より施行されています。日本で一般的に使われているマスクは、顔が隠れるとみなされる可能性がありますので、特別な健康上の理由以外、無用のトラブルを避けるため、オーストリアへ入国・滞在する際、公共の場では外すことをお勧めします。
* 覆面禁止法とは
「公共の場での顔を覆うベールの着用を禁止する」法律です。これにより、公共の場で顔を認識できない程度に覆うことが禁止されます。マスクをしていて、警察官に外すように言われたら従ってください。指示に従わないと、警察署に連れていかれたり、罰金が科せられたりすることもあります。健康上の理由など、いくつかの適用除外規定が設けられていますが、その場合、ドイツ語か英語による医者の証明書が必要となります。
衛生・医療事情一般
オーストリアの気候は、冬季は日照時間が短く平均最低気温が氷点下、夏期は日照時間が長く平均気温20度前後です。衛生状況は良好で、水道水はそのまま飲用できます。ウィーンでもアルプスの水を引いているので美味しい水が水道から出ます。ミネラルウォーターも各種販売されています。
医療事情も良好でどの診療科も特に問題なく受診できます。医師は英語を話しますが、医師以外の医療従事者はドイツ語の場合もあります。薬局では、医師の処方箋がなくても買える薬が多くあります。休日を含め営業時間外でも当番の薬局で薬を購入することが可能です。
滞在許可を持つ外国人でもオーストリアの国民健康保険に加入することができますが、保険料は収入によって違い、加入してから利用できるまでに半年ぐらいかかります。その他に私的保険もありますが、一時滞在者がこれらの保険に加入することはまれです。医療費は非常に高額なので、海外旅行傷害保険等に必ず加入しておきましょう。オーストリアでは救急車は有料です。旅行保険に入っておくと安心です。
自転車の利用者が多いウィーンでは、リング通りなど歩行者用レーンと自転車用レーンに分かれている歩道もあります。その場合は、危険ですので自転車用レーンを歩かないようにしてください。横断歩道の前で信号待ちをする場合も、自転車レーンで待たないようにしましょう。
かかりやすい病気・ケガ
(1)感冒
冬季は季節性インフルエンザが流行します。予防ワクチンは、地域保健センターやプライベートクリニック等で接種できます。
(2)ダニ脳炎
春先から秋にかけて、森林地帯に入ってダニ(マダニ)に咬まれることにより感染し脳炎をおこすもので、死亡したり後遺症が残ったりする例が毎年報告され、オーストリア政府では国民に予防接種を推奨しています。ダニに咬まれたら、必ず脳炎になるという訳ではありませんが、発症する場合は咬まれて3~14日目から感冒の様な症状が出始め、数週間後に発熱、頭痛、麻痺、意識障害等の脳炎症状を起こします。
野外では、ダニに刺されないような服装や忌避クリームの塗布を心がけてください。治療法はなく、ワクチン接種が唯一の予防策です。地域保健センターやプライベートクリニック等で接種できますが、3回接種が必要です。
(3)その他の感染症
サルモネラやキャンピロバクターによる感染性胃腸炎、その他肝炎の報告もあります。性的接触による淋病、梅毒、AIDSの報告もありますので、行動には十分注意してください。
(4)交通事故
自転車専用道路が整備されていますが、自転車と歩行者や自動車との接触・衝突事故が少なくありません。自転車は、専用道路で結構なスピードを出しています。自転車と歩行者との交差点では自転車が優先です。
健康上心がけること
夏は極端に日照時間が長いので、睡眠時間が短くなってとかく疲れやすく、逆に冬は極端に日照時間が短くなり、寒く暗いので抑うつ状態になりがちです。環境に自分の生活を上手に適応させることが大切です。
病気になった場合(医療機関等)
オーストリアの国民健康保険に加入している場合は、救急でなければ最初に一般医を受診します。一般医が対応できない場合は、公立病院を紹介されます。私立病院では、数人のスタッフ以外は、病院が契約した専門医がそれぞれ時間を決めて診療を行います。受診は予約制が原則ですので、公立病院と違ってあまり待つことはなく、検査も柔軟に対応してもらえます。しかし、私立病院での診察料、治療費等は病院や医師によって差があり通常は高額ですので、海外旅行傷害保険に加入しておくか、別途個人保険に加入することを勧めます。当地での歯科診療も特に問題はありませんが、治療に際しては事前に費用を確認してください。
日本語の通じる病院はありませんが、保険でカバーできる通訳を依頼できます(歯科は不可)。支払い方法は振り込み等が多く、受診時に現金は不要です。支払期日が過ぎると延滞金が加算されるので注意が必要です。また入院時には、デポジットを要求されます(3,000〜8,000ユーロ前後)。
救急車を呼ぶ時は「144」です。オーストリアの国民健康保険に入っていない人は有料で、ウィーン市内の場合では690ユーロ(2018年料金)です。医師が症状に合わせて自宅対応のアドバイス、往診、救急車に医師同乗など対応してくれます。英語も可能。搬送病院は指定できませんが、成人の救急、小児病院、外傷(交通事故)など、状態に応じて適切な病院に運ばれます。
もしもの時のドイツ語
医師 | Arzt |
飲み薬 | Medikament |
座薬 | Zäpfchen |
注射 | Spritze |
頭痛 | Kopfschmerzen |
胸痛 | Brustschmerzen |
腹痛 | Bauchschmerzen |
下痢 | Diarrhoe |
発熱 | Fieber haben |
吐気 | Ekel、Übelkeit |
傷 | Wunde |
気分が悪い。 | Ich fühle mich nicht wohl. |
病院へ連れて行ってください。 | Bitte bringen Sie mich zum Krankenhaus. |
風邪をひいた。 | Ich habe mich erkältet. |
下痢をした。 | Ich habe Durchfall. |
めまいがする。 | Ich fühle mich schwindelig. |
ここが痛い。 | Es schmerzt hier. |
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