2023年に実施された医療機器メーカーの調査によると、20~60代の女性の約84.6%が日常生活で「動悸」や「息切れ」を感じたことがあると回答しています。そのうち約65.8%の人は症状に不安を感じていても、「何もしていない」と回答した人は52.7%に上りました。こうした日常的に見られる症状の裏に、命に関わる疾患が隠れていることも珍しくありません。そこで今回は、循環器内科の先生に、女性に多い動悸・息切れの原因と対処法について解説してもらいました。
動悸・息切れの自覚と対応状況
厚生労働省の調査によれば、動悸や息切れの訴えは年齢とともに増加する傾向があります。特に女性では、20代から30代にかけて動悸の訴えが増加し、40代以降ではさらに顕著になります。45歳から66歳の女性では、動悸や息切れの症状を感じても「更年期だから」「少し疲れているだけ」と自己判断し、医療機関を受診しないケースが多いことが報告されています。
動悸や息切れは、日常生活の中で多くの人が経験する症状ですが、これらの症状が頻繁に起こる場合、心臓や肺の疾患、またはストレスや更年期障害など、時に重大な疾患のサインである可能性があります。早期に正しく理解し、適切な対処をすることが重要です。
「よくある症状」こそ要注意!動悸・息切れの原因
動悸とは、自覚的に「心臓の拍動を強く感じる」状態を指します。普段は意識しない心臓の鼓動が速く感じたり、不規則だったりする場合、体が何らかの異常を訴えている可能性があります。一方、息切れは「呼吸が苦しくなる」「階段を上っただけで息が続かない」といった症状です。これも年齢や体力のせいと片づけられがちですが、持続する場合は慎重に観察する必要があります。
1. 急性心筋炎
風邪のような症状の後に、息切れや胸の痛み、脈の異常などが現れる場合、急性心筋炎の可能性があります。急性心筋炎は子どもから大人まで誰でもかかる可能性があり、心臓の筋肉にウイルス感染などが感染して炎症を起こす疾患で、重症化すると心不全や不整脈を引き起こします。急激に症状が進行することがあるため、早期の診断と治療が必要です。
2. 心不全や不整脈
心臓の機能低下やリズムの異常により、動悸や息切れが生じることがあります。心不全は、心臓が血液を全身に十分送り出せなくなる状態です。軽度でも日常的に息切れが続くことがあり、「年のせい」と見逃されやすい疾患の一つです。不整脈も放置すると脳梗塞や心停止につながるリスクがあります。これらの症状がある場合、心電図や心エコー検査などを通じて原因を特定し、適切な治療を行うことが重要です。
3. 亜急性甲状腺炎
甲状腺の炎症により、一時的に甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、自律神経が乱れることで、動悸や息切れなどの症状が現れることがあります。これらの症状は自然に改善することもありますが、診断と経過観察が必要です。
4. 新型コロナウイルス感染症後の症状(ロングCOVID)
新型コロナウイルス感染症の回復後も、息切れや動悸、疲労感などの症状が持続する場合があります。これは「ロングCOVID」と呼ばれる後遺症の一部で、呼吸器だけでなく循環器にも影響を与えることが分かっています。日常生活に影響を及ぼすことがあり、医療機関での相談が推奨されます。
5. その他
上記以外にも、貧血や発熱、低血糖、薬剤の副作用、起立性低血圧などの自律神経の異常、更年期症状、心因反応など様々な原因により動悸を自覚することがあります。
動悸・息切れを防ぐためにできること
普段の生活で簡単に実践できる動悸・息切れの予防法を紹介します。
1. 規則正しい生活リズムを整える
睡眠不足や不規則な生活は、自律神経を乱し動悸の原因になります。毎日決まった時間に寝起きすること、7時間程度の睡眠を目指すことが理想的です。
2. バランスのとれた食生活
カフェインやアルコール、塩分・脂肪分の多い食事は動悸や血圧の上昇に関係することがあります。野菜や魚、発酵食品を意識した和食スタイルが理想的です。
3. 軽い運動の習慣化
有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギング、水泳など)は心肺機能を高め、動悸や息切れを感じにくくします。週に2〜3回、1回30分程度が目安です。
4. ストレスマネジメント
ストレスや緊張は交感神経を優位にして、動悸のきっかけになります。深呼吸、瞑想、ヨガ、趣味の時間などでリラックスする時間を確保しましょう。
受診の目安と対応
以下のような症状がある場合は、心臓のポンプ機能低下や不整脈のサインである可能性があります。特に高齢者や基礎疾患がある場合は、注意が必要です。速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
突然の息切れや強い胸の痛み
安静にしても改善しない動悸
胸に圧迫感や痛みを感じる
少しの運動でも強い息切れを感じる
ふらつきや意識が遠のく感じがある
足のむくみや体重の急増がある
意識障害や呼吸困難を伴う場合
気になる症状がある方、受診すべきか迷っている方、医師への説明方法が知りたい方などは、ヨクミルで日本人医師に相談してください。
参考文献
https://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news/2023/0726.html?utm_source=chatgpt.com
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001422904.pdf?utm_source=chatgpt.com
https://www.gateway-clinic.com/shortness-of-breath/?utm_source=chatgpt.com
https://www.ito-hospital.jp/02_thyroid_disease/02_6subacute_thyroiditis.html?utm_source=chatgpt.com



