目次
アラブ首長国連邦(UAE)の基本情報
油田開発で急激に経済成長を遂げる
多くの人が訪れる中東地域トップの観光立国
アラブ首長国連邦(UAE)は、アラビア半島の東部に位置し、アラビア湾の出口と一部オマーン湾に面し、西から南はサウジアラビアと、東はオマーンと国境を接しています。面積は83,600平方キロメートル(日本の約4分の1)で、北海道程度の大きさです。アブダビ、ドバイ、シャルジャ、ラス・アル・ハイマ、フジャイラ、アジュマン、ウンム・アル・カイワインの7つの首長国により構成される連邦国家で、一般的にUAEと略称されています。
国土の大部分は砂漠地帯ですが、アブダビ首長国の東部アル・アイン地方などはオアシスに恵まれ、肥沃な土壌をもっています。気候は海岸部分で高温多湿、内陸部は乾燥地帯です。人口は、約989万人(2020年:世銀)、首都はアブダビ市です。民族はアラブ人、言語はアラビア語、宗教はイスラム教です。在留邦人は、4,428人(2021年10月1日現在、外務省海外在留邦人数調査統計)です。
16世紀初頭、ポルトガルが当地に進出、以後、オランダ、フランスも進出しましたが、18世紀半ばより進出したイギリスがこの地域を支配しました。その後、イギリスは、各首長国と紛争関係に入りましたが、19世紀半ばにはインド植民地へのルート確保のため湾岸の首長勢力と海上での休戦協定を結び、19世紀末に、各首長国はイギリスの保護領となりました。
1968年、イギリスはスエズ以東の軍事的撤退を宣言、これを契機に各首長国に連邦結成の気運が高まり、1971年12月2日、6首長国により(ラス・アル・ハイマは翌年参加)連邦国家として独立しました。
世界有数の石油と天然ガスの埋蔵量
石油依存経済からの産業の多角化、観光地化へ
元々、遊牧と小規模農漁業、真珠採取などで生計を立てていたこの地域は、1950年代に石油が発見されて以来、急速に変貌を遂げました。油田開発によって急激な経済成長を遂げ、現在では1人当たりのGDPは日本と肩を並べ、中東・アフリカ地域ではカタールに次いで第2位を占めています。
UAEの最高決定機関は7首長国の首長で構成する連邦最高評議会であり、大統領は7首長から互選されることとなっていますが、建国以来アブダビ首長が大統領、ドバイ首長が副大統領兼首相に就任しています。UAE原油の大部分を産出するアブダビと、貿易、観光及び金融に力を入れているドバイの2首長国が、政治・経済・軍事の面で主導権を握っているといえます。
石油と天然ガスの埋蔵量は世界有数で、豊富な石油収入を背景に一人当たり国民所得は高く、医療や教育は無償です。現在は、石油依存経済からの脱却を目指して、産業の多角化、海外投資や流通拠点化などが進められています。
とくにUAEの中でも有名なドバイでは、1980年代から国をあげて観光開発が行われてきました。ホテル運営会社や航空会社の設立、高級ホテルや観光関連施設の建設が進められ、今や年間2000万人を超える観光客が訪れる中東地域トップの観光立国になっています。ドバイ国際空港は2016年の国際利用旅客数世界一となりました。貿易や金融において世界でも有数の地位を占めています。
アラブ首長国連邦の衛生・医療事情
厳しい高温多湿と砂塵に注意!
夏は50℃を超えることも
(1)気象条件
UAEの気候は、10月から3月にかけては比較的過ごしやすいと言われていますが、年の大半は日中40℃前後に達します。さらに7月から9月は最高気温が50℃にも達することがあり、一方で海洋にも面しているため湿度も90%前後となることがあり、気候は非常に厳しいものとなります。
また基本的には砂漠地帯であり、大気中の砂塵の目安となる直径2.5、あるいは10マイクロメートル以下の粒子状物質(PM2.5あるいはPM10)の量が多く、PM10の場合、年間平均濃度では、アブダビで170ミリグラム毎立方メートル(日本は東京都千代田区で22ミリグラム毎立方メートル)で、日本の平均的な値の7倍以上の数字となっています。大気質指標(PMI)では300以上、つまり「戸外での活動が危険とされる水準」に達することがしばしばあります。呼吸器・循環器に持病を持つ人のみならず、健常人においても、こうした時期に過剰に砂塵に曝露されないよう注意が必要です。
(2)水質、食品、衛生環境など
都市部の水道水は海水を脱塩化処理して真水(蒸留水)を精製し、それに電解質を加え殺菌処理をし、家庭へ供給しています。理論上は無菌ですが、低品質材料による供給用パイプや貯水槽が原因で、鉄錆や微生物の混入を認めることがあるため、水道水を直接飲用にしない方が無難です。総じて、街はペットやゴミの管理も含めて清潔に保たれています。
(3)医療水準、制度
医療機関は国立病院と私立病院に分けられますが、国立病院には外国人に対する受診制限が一部存在するため、緊急に搬送された場合を除いて外国人は私立病院を受診するのが一般的です。一方でホテルが、常設クリニックあるいは顧問契約をしている医師や病院を有している場合もあります。
救急車両依頼システムは、制度上は整備されていることになっていますが、実際にはスムーズに稼動していない、あるいは地域によって救急車の到着が非常に遅れることもあり、移動可能な状態であれば自家用車、タクシー等で病院を受診するのが現実的な場合もあります。
医療水準
一般的な呼吸器感染症(風邪)、消化器感染症(急性胃腸炎)などの軽症から中等度までの疾病や外傷の診療は、当地でも可能と考えられます。しかし、精密検査や悪性腫瘍手術、複雑外傷に対する治療などの場合は、必ずしも日本と同等の医療レベルに達していないことがあり、帰国を考慮すべき事例もあります。輸血については、他の先進国と同様に照射処理が施されています。
医療費の支払い
長期滞在者は、民間保険会社の医療保険加入が義務付けられています。旅行者の場合は全額自己負担となります。いずれの場合でも、海外旅行傷害保険などによる還付を受けるために、診断書と領収書を忘れずに受け取ってください。医療費はかなり高額になることがあり、現金が足りない場合など、クレジットカードでの支払いなども可能です。
薬局・医薬品
院内薬局に加えて、院外薬局をショッピングモール内や繁華街で見つけることができます。医薬品の一部(アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)は医師の処方箋がなくても購入する事が可能です。なお、医薬品の多くは国外からの輸入品です。
かかりやすい病気・ケガ
(a)交通事故
当国における死因の第2位が交通事故で、日本人被害者も発生しています。運転マナーが悪く、無謀運転に注意してください。
(b)呼吸器感染症(風邪、気管支炎、肺炎等)
粉塵(屋外での多量の砂塵、屋内の埃など)、屋内外の温度差などが原因で、呼吸器疾患を患う方が多いです。また、当地の多量の砂塵は呼吸器疾患のみならず、心臓などの循環器系へも悪影響があることがわかっています。よって、呼吸器や循環器に持病のある方は、砂塵への曝露を極力控えるようにしてください。
(c)熱中症および脱水症
夏季にはほぼ毎日、熱中症患者が病院に搬送され、死亡例もあると報道されています。外出、屋外での運動の際には、脱水症に注意してください。外出時にはペットボトルなどの水を持参し、こまめに水分(+塩分)補給を心掛けることをおすすめします。特に当地での気候に慣れないうちは熱中症になりやすいため、長時間屋外に出ることは控えた方がいいでしょう。
(d)急性胃腸炎
当地の水道水は比較的水質に恵まれているものの、レストラン・食堂の仕事に従事する者の衛生概念が低いことがあり、不衛生な手指を介し食物などがA型肝炎ウイルスやチフス菌などに汚染されていることもあり得ます。外食の際には、十分加熱調理されているかどうか確認してください。
(e)アレルギー性疾患(皮膚炎、結膜炎、鼻炎等)
建物の空調は十分に保守・管理されていないことがあり、カビやその他の菌体成分由来のアレルギー誘発物質が発生している場合があります。これらにより湿疹、眼の掻痒、流涙、鼻汁等の症状が出ることがあります。また砂塵がアレルギー症状を引き起こす場合もあります。
(f)紫外線による障害
太陽光線が強く、紫外線による皮膚や眼の障害には注意が必要です。外出時のサングラス着用、日焼け止めクリーム塗布などによる予防が大切です。1年を通して水浴の機会も多いので、その際の過剰な日焼けに注意してください。
健康上心がけること
(a)一般的に当地の気候は高温で、特に夏季はこれに多湿が加わり、食物が傷みやすい環境です。食品管理には充分に注意してください。また、使用人(メイド、運転手)を雇う場合には、手洗いなど衛生面での教育を徹底することが必要です。
(b)水道水は家庭に届くまでに汚染される可能性がありますので、飲料水はミネラルウォーターをお勧めします。
(c)普段より紫外線対策として肌を露出しない、日焼け止めを使用する、サングラスをかける、帽子を被るなどの対策を取ってください。また、当地では一年を通して気温が高く、プールや海で泳ぐ機会も増えます。度重なる皮膚へのダメージを避ける意味で、特にお子様や肌の弱い方は、水浴時もスイムスーツやTシャツの着用、日焼け止めクリームの塗布などで日焼けを最小限に抑えることをおすすめします。
(d)熱中症予防のため、暑さ対策と水分補給は重要です。屋外に出る場合は上記の紫外線対策と共に、十分に水分(+塩分)を摂るようにしてください。
(e)交通事故には注意してください。道幅が広く、道路を横断するのに時間がかかる上、車の制限速度が2018年に引き上げられた上、運転手は横断しようとする歩行者の前で止まってくれないことが多いため、安全を十分確認した上で横断してください。たとえ横断歩道上であっても、周囲に注意を払ってください。
(f)日中は暑いため外出する機会が少なく、室内に閉じこもりがちになり、大人も子供も運動不足となる傾向にあり、また心理的なストレスの原因になる可能性があります。室内で運動のできる施設等を活用してください。一方、建物内では過剰なほど冷房を効かせていることが多いため、あらかじめ上着を準備するなどの対処が必要です。
(g)2012年9月以降、中東呼吸器症候群(MERSコロナウイルス感染症)が中東で流行を繰り返しています。UAEにおいて、現在までにMERS感染が確定したケースは80例を越えています。感染経路としては、ウイルスを保持するラクダとの接触、その肉・乳製品の生あるいは加熱不十分な調理品の摂取とされています。当地滞在中はラクダへの接触やその肉・乳製品の生での摂取を避け、十分に加熱・調理したものを摂取することが重要です。
ラクダへの接触等、MERSコロナウイルスへの暴露の可能性がある場合、日本帰国後に検疫所による2週間(ラクダ接触から)の観察検疫の対象になりますので、ご注意ください。MERS感染での致死率は高く、一度その症状(発熱と強い呼吸器症状など)が発生した場合、可及的速やかに保健当局に通報し、適切な治療を開始することが重要です。
病気になった場合(医療機関等)
国公立病院も救急部を受診する際には紹介状は不要ですが、一般外来を受診するのは難しく、ほとんどの邦人は私立病院(またはクリニック)を利用しています。私立病院は、毎日24時間体制で患者を受け付けていますが、専門外来や歯科は予約が必要です。公共交通機関はあまり利用されておらず、病院へは自家用車かタクシーを利用します。
アブダビ空港やドバイ空港にも24時間開院の空港クリニックがありますが、知らない職員もおり、尋ねても「ない」と言われることがあります。必ずインフォメーション・デスクで尋ねてください。しかしクリニックのスタッフ自体が不在の場合もあり、看板通りに機能しているとは言えません。
もしもの時のアラビア語
アラビア語の発音は、必ずしも日本語カタカナ表記で表せないものもあることを御理解の上、参考としてください。UAEのほとんどの病院は英語での会話が可能ですので、無理にアラビア語を使用する必要はありません。なお、英語については、「もしもの時の医療英語」を参照ください。
医師 | タビ-ブ |
薬 | ドワ |
下痢 | イスハール |
発熱 | ハラーラ |
薬 | ドワ |
注射 | オブラ |
下痢 | イスハール |
嘔気 | タルジーア |
嘔吐 | ゾゥワ |
傷 | ジュルハン |
頭が痛い | ラーシィ・ヤウールニ |
腹が痛い | ボトニ・ヤウールニ |
具合が悪い | アナ・タ-バ-ン(男性の場合)、アナ・タ-バ-ナ(女性の場合) |
病院へ連れて行ってほしい | ワッドニ・イラ・ムスタシュファ |
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