この時期、日本では「秋の花粉症」を発症している人が増えています。春はスギなどの樹木が多いのに対して、秋の花粉症は、キク科のブタクサやヨモギなどがアレルゲンになっています。海外でも多く生息していて、繁殖力が強く住宅街や道端、川沿いなど身近な場所に広く分布する雑草なので、世界中に花粉症で悩んでいる人が多くいると思います。今回は、この時期に多い草が原因の花粉症について、専門医に解説してもらいました。
多くの人を悩ませる世界の花粉症事情
花粉症は「現代病」とも言われていますが、古くから人々を悩ませてきた病気です。世界で最初に「花粉症」と呼んだのはヨーロッパで、イギリスの1819年当時の診療記録が、最古のものとされています。
日本では「国民病」と言われていますが、前述の通り世界中の人が悩まされています。世界アレルギー機構(World Allergy Organization)の2016年の報告資料によると、13〜14歳の小児における花粉症の有病率は、世界全体で22.1%でした。地域別では下記の表の通りで、過去15年間で平均0.3%の割合で増加しています。
エリア別花粉症有病率(13~14歳の小児) | |
アフリカ | 29.5% |
アジア | 23.9% |
東地中海 | 20.1% |
インド亜大陸 | 15.8% |
中南米 | 23.7% |
北米 | 33.3% |
北欧・東欧 | 12.3% |
オセアニア | 39.8% |
西ヨーロッパ | 21.2% |
また、同報告によると、気候変動や環境によって花粉の飛散期間の長期化、飛散量の増加が指摘されています。例えば、二酸化炭素(CO2)の増加と気温の上昇は、ブタクサ等の花粉生産量を大幅に増加させるほか、シラカバ、ヨモギ、イネ科、スギなどのアレルギー誘発植物を対象とした研究でも、花粉飛散開始時期の早期化が確認されています。
草類による花粉症の症状と予防法
スギ、ブタクサ、イネ科植物による花粉症は、「世界3大花粉症」と言われ、アメリカではブタクサによる花粉症が、ヨーロッパではイネ科の植物の花粉症が多くみられます。
ブタクサなどのキク科は、スギに比べると花粉の大きさが半分ほどしかなく、体の奥深くまで入り込みやすいのが特徴です。気管支に入り込むと、粘膜を刺激して咳などの症状を引き起こします。そのため、くしゃみ、鼻水、目の痒みなどの通常の花粉症の症状に加え、咳が出やすいため風邪と間違いやすいのです。元々喘息の人は、症状を悪化することもありますので、注意してください。
予防法は、スギなどの一般的な花粉症と同様で、まずは花粉を浴びないように気をつけます。スギ花粉は最大200kmと広範囲に及ぶのに対し、草類は背丈も低く、花粉の飛散距離は数メートルから数10m程度なので、河川敷や草むらなど生育している場所に近寄らないようにすれば、比較的容易に避けることができます。足元から舞い上がる点から、身長の低い人が影響を受けやすいので、お子さんにも注意してあげてください。
そして、家に花粉を持ち込まないように、帰宅したら衣類の花粉を払い落とし、うがいや洗顔をするように努めましょう。生育地の近くを通ったり、屋外で長時間作業したりする場合は、マスクや花粉症用メガネなどで目と鼻などをガードするようにしてください。
気になる症状がある、花粉症か他の病気か分からない、どんな薬を選べば良いかわからない場合などは、ヨクミルで耳鼻咽喉科の医師にご相談ください。
<参考文献>
NHK 「増えています!秋の花粉症」
ニッセイ基礎研究所 「花粉症は海外でも増加」
環境省 「花粉症環境マニュアル2022」
花粉症ナビ 「スギ以外の花粉症」
大正製薬 「ブタクサの花粉症は秋から!・・・」