ある日突然、肩に激痛が走ったり、腕が上がらないなどの症状が起きたりするのが、四十肩・五十肩です。全人口の2〜5%*の人が、一度は経験すると推定されています。50〜60歳代が最も多く、40歳以前に経験することはまれです。女性にやや多く、利き腕よりも利き腕ではない方に起こることがやや多いという研究データもあります。20〜50人に1人がなるという計算になり、いつ自分に起こってもおかしくないという身近な症状です。今回はこの四十肩・五十肩について、整形外科医の先生に解説してもらいました。
*Semin Arthritis Rheum. 1982; 11(4): 440-52
突然起きるかも知れない五十肩の原因と症状
一般的に四十肩・五十肩と呼ばれる疾患は、正式には「肩関節周囲炎」という疾患のことを指します。関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱、関節の動きを滑らかにする滑液包(かつえきほう)と呼ばれる潤滑油のような役割の液体の老化(変性)によって、肩関節の周囲組織に炎症が起きることが原因の一つと考えられています。しかし、原因不明の場合も多く、ある日突然肩に激痛が走るということも多いようです。
傾向としては、スポーツなどで肩を酷使したことのある人、肩に怪我をした人、姿勢の悪い人は、発症リスクが高くなります。運動不足や慢性的なストレス、閉経などによるホルモンバランスの変化も、四十肩・五十肩の発症に影響すると考えられています。
また、糖尿病の人は四十肩・五十肩になりやすく、治りにくいと言われています。糖尿病により血糖が高い状態が続くと、関節包などを構成しているコラーゲンが硬くなりやすいためだと考えられています。肩関節の動きをよくする袋(滑液包)や関節を包む袋(関節包)が癒着するとさらに動きが悪くなります。この状態を凍結肩(Frozen Shoulder)と呼ぶ事もあります。
四十肩・五十肩の特徴的な症状は、腕を上げる途中で痛みが出て、それ以上腕が上げられなくなることです。これは、肩関節周囲の組織が硬くなって関節の可動域が制限されるためです。それにより、髪を整えたり、洋服の脱ぎ着をしたりするなどの日常の動作が困難になります。その後は、腕を動かさなくても強い痛みを感じたり、強い夜間痛のために不眠になったりする場合もあります。
対処法と予防法で辛さを解消しましょう!
1〜2年で自然に痛みがおさまる事もありますが、痛みがあるからと動かさないでいると、関節が癒着して動かなくなることもあります。痛みの段階によって、適切な対処法と予防法を実践しましょう。
まず、痛みが激しい時や肩が熱を持っている時は、無理して動かさず、三角巾やアームスリングなどで腕を固定して安静にしましょう。辛い場合は、患部を冷やしたり痛み止めを服用したりするのも良いでしょう。痛みで眠れない時は、腕を固定したり、肩の下に畳んだタオルなどを敷いて、痛くない高さに調節したりしましょう。
激しい痛みが落ち着いたら、ホットパットや湯船に浸かって肩を温めましょう。ストレッチなども有効ですが、痛みが出ないように無理のない範囲で行ってください。そして、生ものや冷たいものを控え、生姜や長ネギ、シナモンやスパイス類を摂ることで、血行促進することもオススメです。これらの方法は、予防にも効果的なので日頃から取り入れるようにしてください。
四十肩・五十肩に似た症状で、肩腱板内に沈着したリン酸カルシウム結晶によって急性の炎症が生じる石灰沈着性腱板炎、肩を機能させるためのインナーマッスルである腱板の損傷である肩腱板断裂などがあります。痛みや不具合などが気になる場合は、ヨクミルで整形外科医に相談してください。