テレビなどを見ているお子様が、口をぽかんと開けていることはありませんか?近年この症状を持つ子どもが増えています。そのような状態が頻繁にあるなら、「口唇閉鎖不全」かも知れません。「お口ぽかん」とも呼ばれ、健康な口の発達に深刻な悪影響を及ぼす恐れがあるとされています。全国の3〜12歳の小児3534人を対象に行った調査では、日本の子どもの約3割にこのような症状が見られました。子どもだけでなく大人にも注意が必要な「口唇閉鎖不全」について、口腔外科の先生に解説してもらいました。
歯周病やウイルス感染などの危険が潜む
「お口ぽかん」は、口の機能が発達していないために起こる症状で、子どもに多く見られますが、大人でもめずらしい症状ではありません。子どもの場合は親が気付くことが多いですが、大人は習慣になってしまっていて自分で気づけない、なかなか直せないという特徴があります。
唇を閉じる力(口唇閉鎖力)が弱くなることで、①歯並びが悪くなる、②口呼吸になることで集中力が低下したり、鼻づまり、気道閉塞、イビキなどが発生する、③虫歯や歯周病が増悪したり、ウイルスや細菌などが入りやすくなり、風邪にかかるなどのリスクがあります。
① 歯並びが悪くなるリスク
舌の筋力や位置によって「お口ぽかん」が起こっている場合、歯並びやかみ合わせの悪化につながることがあります。安静時の舌は、上あごについているのが正しい使い方ですが、上あごではなく前歯や上下の前歯の間に位置していることで、徐々に歯を動かしていってしまう恐れがあるからです。その結果、上下の前歯がかみ合わない「開咬」や、前歯が前方に突出する「上顎前突/出っ歯」になるリスクがあります。
② 鼻づまり、気道閉塞、イビキの発生
寝るときに口を開けたままだと気道が狭くなり、気道の狭くなった部分に空気があたり振動を起こすことでイビキが出やすくなります。また、睡眠時無呼吸症候群のひとつの閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、気道が狭くなることで起こります。そのため、口唇閉鎖不全は睡眠時無呼吸症候群のリスク、生活習慣病やメタボリックシンドローム、心筋梗塞や脳卒中のリスクを上げることがわかっています。
③ 虫歯や歯周病、ウイルス感染のリスク
口を開けている時間が長いことで、口の中に雑菌が入り込みやすく、唾液の量が減り唾液の自浄作用や抗菌作用の働きが弱まることで、虫歯や歯周病、ウイルスなどの感染リスクが高くなります。また、口唇閉鎖不全によってかみ合わせや歯並びが悪くなると、汚れがたまりやすい箇所や磨き残しが出やすいため、虫歯や歯周病のリスクを高めてしまう原因です。
お口ぽかんの予防法と改善法
大人の方でも、ご飯を食べる時にくちゃくちゃと音が出る、食べこぼす、いびきをかくなどがある場合は、口唇閉鎖不全症の可能性があります。舌や口周りの筋力不足、舌の悪習慣などが原因になっている場合は、それを取り除くことが大切です。
お口ぽかんを予防法と改善法を紹介します。口周りの機能を正しく改善させるため、口輪筋(口の周りの筋肉)を鍛えるトレーニングなどが効果的です。トレーニングに痛みなどはありませんので、小さなお子様でも取り組みやすいです。また、日頃から口を閉じる習慣をつけることが大事ですので、お口ぽかんに気づいたら、こまめに声をかけるようにしましょう。昔は「口を閉じなさい」、「口を閉じて食べなさい」と、口うるさく注意していた家庭も多かったと思います。根気強く注意を促すことで、徐々に口唇閉鎖を意識するようにすることも重要です。
ご家庭での改善が難しい場合で、すでに歯並びやかみ合わせに影響が出てしまっている場合は、ヨクミルで歯科医師にご相談ください。効果的なトレーニングや治療法などをアドバイスさせていただきます。
監修者プロフィール
総合病院で口腔外科手術と術後管理、口腔領域の外傷救急処置、障害者歯科治療、高齢者有病者歯科治療、口腔ケアなどを勉強しながら、保険診療の歯科治療を中心に、抜歯などの小手術、粘膜疾患などに対応してきました。提案された治療法が適切なのか、口内炎、舌のできもの、歯の治療後の違和感、顎の痛みなどもアドバイスができます。アメリカ在住。
著者プロフィール
文具メーカーでプロダクトマネージャーを担当後、システム開発販売会社で販売促進やイベント企画を経験。その後、フリーのプランナー・コピーライターとして、商品企画と販売促進全般、店舗、経営者、政治家、医者などの取材、ライティングを数多く手がける。2021年より、YOKUMIRU株式会社のブランディングマネージャーに就任。医療、健康、美容、飲食系のライティングを得意としている。