海外で暮らしていて、胸がキュッと痛んだりすると不安になってしまうこともあると思います。胸の痛みは原因が様々あり、自分で判断がしにくいことが多いので、痛みがおさまった後も、なんとなく不安に感じてしまう人もいるのではないでしょうか?そこで今回は、胸の痛みの原因などについて循環器内科の先生に解説してもらいました。
胸の痛みの52%は心臓以外が原因
ある総合内科クリニックの統計(臨床雑誌『内科』2018;122巻:P485-488)では、初診時に胸痛を訴えた患者の最終診断は、狭心症8%、その他の心疾患5%、肺・気管支疾患20%、消化器疾患10%で、筋・骨格疾患20%、肋間神経痛 8%、心因性など17%、その他・不明11%だったということです。つまり、筋・骨格疾患、心因性、その他の計56%が、内臓などが原因ではないものでした。
胸の痛みは、様々な原因によって引き起こされますが、それらがすべて心臓の病気というわけではありません。胸痛の一般的な病気などには、下記のようなものがあります。
胸の痛みの主な原因 | |
大動脈 | 解離性大動脈瘤など |
心臓・心膜 | 狭心症、心筋梗塞、心膜炎など |
肺・胸膜 | 自然気胸、胸膜炎、肺腫瘍など |
神経 | 肋間神経痛、帯状疱疹など |
筋肉・骨格 | 肋軟骨炎、筋肉炎など |
消化器 | 逆流性食道炎、胆石、胆のう炎など |
医療機関を受診した方が良い症状は?
経験したことのない激痛、痛みで脂汗や冷や汗が出る、背中に移動するような痛み、息苦しさと吐き気などを伴う場合は、下記のような疾患が考えられます。このような場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
・解離性大動脈瘤
心臓から全身に血液を送る大動脈の壁に亀裂ができ、血管の壁の内側と外側の間に血液が流れ込み、血管が裂けてしまう疾患。突然激烈な胸の痛みがあり、背中や腰にも広がります。けいれん、足の痛み、腹痛、失神、意識障害が起こることも。
狭心症
心臓の筋肉に血液を送り込む冠動脈が、脂質異常症や糖尿病などにおいて動脈硬化で狭くなり、心筋に血液が不足しやすい状態。労作で心臓に負担がかかった時に、締め付けられるような胸の痛みを起こします。夜間や朝方に生じやすい異型狭心症は、アジア女性に多いと言われています。
心筋梗塞
心臓の筋肉に血液を送り込む冠動脈が、動脈硬化を起こして狭くなると、血液が固まってできる血栓が詰まり、完全に血流が止まってしまう疾患。突然胸に激痛が起こり、30分から数時間続くことがある。吐き気や冷や汗、意識を失うことも。
心膜炎
心臓を包んでいる心膜に、ウイルスや細菌が感染して起こると考えられている。炎症を起こし、左胸に切れるような鋭い痛みを感じ、深呼吸や咳をするとさらに強い痛みに襲われる。座ったり前屈みになったりすると痛みが軽減するのが特徴。
自然気胸
肺を形成する、直径約0.2mmの肺胞の間に溜まった空気の袋(気腫)が破裂したことが原因で、肺が急速に縮む疾患。激しい胸の痛みが起こり、咳が出て呼吸が困難になり、呼吸不全で死に至ることも。20代前後、60歳代の痩せ型の人に多い。
逆流性食道炎
暴飲暴食の習慣や加齢、肥満などが原因で胃酸が逆流して、食道に炎症が起こる疾患。胸やけ、喉や胸のつかえが起こり、胸を締め付けられるような痛みを伴うこともある。胸やけは特に食後に起こりやすくなる。
肋間神経痛
左右どちらかの肋間に沿って突発的に激しい痛みを感じる。痛みは数秒から数分間続く。帯状疱疹の感染時や後遺症として起こるほか、変形性脊椎症などの脊椎や脊髄の疾患などが原因。
帯状疱疹(帯状ヘルペス)
体内に潜伏していた水ぼうそうのウイルスが活性化して起こる。激しい痛みを伴う小さな水ぶくれが、体の片側の肋間神経に沿って現れる。背中やお腹に水ぶくれが起こることも。免疫力が落ちている時に発症しやすい。
必要以上に不安やパニックにならない
上記のような症状でない場合は、胸が痛むからといって、必要以上に不安に感じる必要はありません。緊張してドキドキしたり、辛いことがあると胸がズキっと痛んだりすることは誰にでもあります。胸の痛みは、心の状態を反映することも多いので、胸が痛いからといってパニックになると、余計に症状がひどくなることもあります。
また、若い女性に多い胸痛のひとつ「胸痛症候群」は、チクチク、ピリピリとした痛みのほかに、胸が締め付けられるような感覚がある人もいて、症状は様々です。体を伸ばしたり、体勢を変えたりした時に痛みが消失したり、現れたりする傾向があります。成長期や思春期によくみられる病気で、主に筋肉や骨の成長やストレスが原因とされています。
胸が痛いという時は、落ち着いてどのくらいの時間痛いか、痛みが出たきっかけは何だったか、痛くなるタイミングはいつか、痛い場所はどこなのか、呼吸によって痛みは変化するか、痛みを感じる姿勢はあるか、他にどんな症状があるのかなどを記録して、医師に相談すると原因の究明に役立ちます。
胸の痛みが続く場合、ほかにも気になる症状がある方は、ヨクミルで気軽に相談してください。