人との距離が近いときに、「口臭は大丈夫かな?」と心配になったり、相手の口臭が気になったりすることがあると思います。周りの人に不快な思いをさせないように、適切なケアを心がけたいですね。今回は、口臭の原因と予防について、医師に解説してもらいました。
気になる口臭の種類と主な原因
口臭は、ほぼ全ての人にある「生理的口臭」や、病的原因を除去しない限り消失しない「病的口臭」など、大きく分けて下記の5つの種類があります。
1. 生理的口臭
健康な人でも誰にでもある臭いで、起床時、空腹時、緊張時などに強くなります。唾液の分泌が減少して、細菌が増殖して口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC: Volatile Sulfur Compounds)がたくさん作られるためです。歯磨きや飲食によって弱まるので、治療の必要はありません。
2. 飲食物・嗜好品による口臭
ニンニク、ネギ、酒、タバコなどによる一時的な口臭。時間経過や歯磨きなどで減少するため、こちらも治療の必要はありません。
3. 病的口臭
歯周病、むし歯、歯垢、歯石、舌苔(ぜったい)、唾液の減少など、90%は口の中に原因があります。それ以外に、鼻や喉の病気、呼吸器系や消化器系の病気、糖尿病、肝臓疾患などが原因の場合もあります。「病的口臭」は、およそ3人に1人の割合であることが報告されています。
4. ストレスによる口臭
ストレスなどで唾液の量が少なくなると、口臭が強くなります。
5. 心理的口臭
自分自身で強い臭いがあると思い込む人がいます。
病的口臭の主な原因は?
「病的口臭」の原因には下記のようなものがあります。思い当たるものがある方は、ケアをするようにしましょう。
1. 歯周病
初期には痛みがないので、自覚できずに放っておくと静かに進行します。歯を磨くなどのちょっとした刺激で出血することがあります。病気が進行すると出血に膿が混じって口臭がひどくなってきます。
2. むし歯
食べかすやむし歯菌が、むし歯の中に溜まり臭いがきつくなり口臭の原因になります。初期のむし歯は口臭が強くなることはありませんが、進行してくると次第に強くなってきて、神経まで侵されると強烈な臭いがします。
3. 歯垢(プラーク)
歯の表面に付着する柔らかい堆積物で、ほとんどが細菌です。食べ物の残りかすを栄養とする微生物とその代謝産物からなり、放置すると歯石を作ります。むし歯や歯周病の原因になります。
4. 歯石
歯垢が作った固まった石灰分です。たくさんつくと口臭もひどくなります。歯石がつくことで歯周病を進行させます。
5. 舌苔(ぜったい)
舌の表面につく白っぽいもので、歯垢と同様に細菌のかたまりで、口臭の原因になります。体調の良くないときに量が多くなります。舌をきれいにすると口臭も軽減します。
6. 唾液の減少
唾液には口の中を洗い流す作用、細菌の増殖を抑える作用、口の中の粘膜を保護する作用などがあり、唾液の分泌が少なくなると口の中が不潔になり、むし歯や歯周病になったり、口臭が強くなったりします。
口臭予防に有効な舌掃除をやってみましょう
口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物VSCは、舌の上で最も多く作られています。これは舌に白い苔状のもの(舌苔)が付着するためです。生理的口臭の予防のためには、歯磨きだけでなく舌掃除で舌を清潔に保つことが有効です。
舌苔のつき方には個人差があり、時間帯や体調によっても異なります。舌の運動や唾液の分泌量が関係していると考えられているので、舌掃除は朝起きてすぐ行うと良いでしょう。下記のような手順で行なってください。
① 鏡を見ながら舌を思いっきり前に突き出して、舌の根元に舌苔がついていないか確認。
② 舌ブラシ(毛先の柔らかい小児用歯ブラシ、目の洗いタオルなどでも可)を鏡で見える最も奥に軽くあて、手前に引く。力を入れすぎないように注意。息を止めて行うと嘔吐反射が出にくい。
③ 舌ブラシを水でよく洗い、舌苔がついてこなくなるまで①②を1、2回繰り返す。
やりすぎると、舌の粘膜を傷つけるので注意。
そのほか、プラスチックの人口歯、被せた金属の腐食、口腔がんが原因の場合や、前述のように鼻やのどの病気、呼吸器系や消化器系の病気、糖尿病、肝臓疾患などが原因の場合もあります。ケアしても口臭が軽減されないとき、気になることがあるときは、ヨクミルで相談してください。
参考文献
e-ヘルスネット 「口臭の治療・予防」
オーラルヘルスオンライン 「口臭の原因と治療法」
口腔外科相談室 「口腔内トラブル」