現地の医療健康情報から知るマレーシア生活

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マレーシアで暮らすための気候や地域性などの基本情報から医療事情、病気や怪我したときの注意事項などを紹介しています。

 

マレーシアの基本情報

豊かな自然と多民族が調和した
東南アジアの魅力が凝縮した国

南シナ海を挟んでマレー半島とボルネオ島北部にまたがるマレーシアは、陸地の60%を熱帯雨林が占める非常に自然豊かな国です。面積は、約33万平方キロメートル(日本の約0.9倍)、人口は3,270万人(2020年マレーシア統計局)で、在留邦人数は30,973人(2020年10月現在)です。

首都クアラルンプールなどの都市部では、目まぐるしい発展が続いていて、近代的な高層ビル群やショッピングセンターなどが立ち並んでいます。高速道路や鉄道などのインフラも次々と整備され、国全体の近代化が急速に進んできています

その他にも、世界的に有名なペナン島やランカウイ島などのリゾート地、ジョージタウンやマラッカといった世界遺産などもあります。多民族が調和し、独自の文化を持つマレーシアには、東南アジアの魅力が凝縮されていると言えるでしょう。

民族は、マレー系(69.6%)、中国系(22.6%)、インド系(6.8%)、その他(1%)(2020年マレーシア統計局)。民族によって話す言語も大きく違います。マレー系ならマレー語(国語)、中華系なら中国語(広東語がメイン)、インド系はタミール語等、そして、皆共通して話すのが英語です。イギリス領だった頃の名残から現在でも広く英語が使われています

マレーシアの国教はイスラム教(61.3%)です。街中でも多くのイスラムの衣装をまとった人々や、街のいたるところにモスクが見られます。他にも、仏教(19.8%)、キリスト教(9.2%)、ヒンドゥー教(6.3%)、儒教・道教等(1.3%)様々な宗教がマレーシアにはあります。

スリやひったくり、イカサマ賭博に注意!
現地人のように振る舞うのがポイント

マレーシアの治安は東南アジアの中では比較的良く、安定していますが、日本と比べると、街中でのスリやひったくりなどの犯罪は多いので注意が必要です。

トラブルを避けるためのポイントは以下の5つです。

1) 夜はなるべく1人で出歩かない

2) 派手・露出の多い服装を避ける

3) 夜に1人でタクシーに乗らない

4) 常に注意を払いながら歩く

5) 賭け事の誘いに乗らない

やはり、いかに現地の人達のように振る舞うか、という事が大事になってきます。マレーシアではイカサマ賭博も流行っていて、賭けトランプゲームに参加し、お金を巻き上げられる観光客が増えています。上の5つのポイントをしっかりと守って、トラブルに巻き込まれる可能性をできる限り低くしましょう!

参考 マレーシア情報サイトgo-malAYsia 

 

 

日本から学ぶことで、経済・社会的発展を目指した

マレーシアの主な産業は、製造業(電気機器)、農林業(天然ゴム、パーム油、木材)及び鉱業(錫、原油、LNG)など。電気製品、パ-ム油、化学製品、原油・石油製品、LNG、機械・器具製品、金属製品、科学光学設備、ゴム製品等などを、中国、シンガポール、米国などに輸出しています。

2022年はマレーシアが東方政策を開始して40周年に当たります。1982年に始まった同政策では、日本人の労働倫理、学習・勤労意欲、道徳、経営能力などが日本の発展の原動力であるとの考えの下、これらを日本から学ぶことで、マレーシアの経済・社会発展が目指されました。

東方政策の下、数多くのマレーシア人留学生が日本の大学や高等専門学校に派遣されました。また、日本の民間企業や地方自治体、国際協力機構(JICA)が研修生を受け入れ、産業技術や経営スキルの習得を支援しました。これまでに日本に派遣された留学生やマレーシア人研修生は2万6,000人を超えます。東方政策により育まれた人材は、マレーシアの産業や社会の発展を支えてきただけでなく、日本とマレーシアの架け橋としても重要な役割を果たしてきました。

 

マレーシアの衛生・医療事情

郊外のインフラや衛生状況と、微粒子による大気汚染に注意

半島マレーシアはマレー半島の南半分を占めており、北はタイ、南はシンガポールと相対しています。気候はいわゆる常夏で、日中の気温は年間を通じて24度から32度となりますが、夜間・早朝にかけては比較的涼しくなります。10月から2月が雨季にあたるため降水量が多くなります。

東南アジア諸国の中ではインフラ整備が進んでおり、首都クアラルンプールは非常に近代的な都市です。しかし都市部を離れるとインフラ・衛生状況も日本とは異なり、上水道は比較的管理されていますが、配管・貯水槽の管理に問題があるためミネラルウォーターや浄水器の使用を勧めます

ヘイズが見られることがあり、目やのどの痛みを訴える人もいます。これは、インドネシアのスマトラ島やカリマンタン島における焼畑農業や山火事に起因する煙、排気ガスなどに含まれる微粒子が原因となって起こる大気汚染の一種です。ヘイズは4月から10月にかけて悪化し、汚染された大気は南西モンスーンによって隣国のシンガポールやマレーシアを覆い、健康被害が懸念されるようになります。

医療機関は比較的充実しており、大きな私立病院であれば設備も十分に整っているため特に問題なく受診できます。こうした病院の多くでは海外旅行傷害保険があればキャッシュレスで受診できます。ほとんどの医師は英語を話し、日本人スタッフや日本語での診療が可能な医師が勤務している私立病院もあります。このような医療機関は一般に高額なので、海外旅行傷害保険に加入しておくことをお勧めします。

かかりやすい病気・ケガ

(1) 急性胃腸炎

細菌・ウイルスによるものが多く、腹痛・下痢(時により発熱や嘔吐)といった症状が起こります。毒性の強い細菌に感染しない限りは、脱水症状にならないように適宜水分を補給し、菌を出してしまえば改善しますので、必要以上に神経質になる必要はありません。

細菌性の下痢では、下痢止めを使いすぎると、かえって腸内で毒性の強い菌が増え、症状を悪化させることがありますので、注意が必要です。なお、衰弱が著しい場合や、何日も下痢や発熱が続く場合などは、医師に相談してください。

多くは、病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、コレラ菌、赤痢菌、ノロウイルス、アメーバ赤痢などが原因となります。生ものや加熱不十分な食品、都市部以外で衛生的では無い水道水、ストリートフードの摂取はなるべく避けるようにしましょう。このほか旅行での疲労、暴飲暴食、慣れない食べ物が原因で起こる下痢などもあります。

(2)デング熱・チクングニア熱

蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ。主に日中に活動する)に媒介されるウイルス性感染症です。都市部でも多く発生しており、蚊が発生しやすい雨季に患者も増加します。虫除け、蚊取り線香などを使用し身を守ってください。

デング熱は、発熱・頭痛・筋肉痛・発疹といった症状がみられますが、一部は重症化し、血小板の低下、時にデング出血熱に移行して死亡する人もいます。チクングニア熱は発熱と関節痛が必発し、筋肉痛、リンパ節腫脹などがみられることもあります。デング熱・チクングニア熱にはワクチンや直接有効な治療薬は存在せず、安静と対症療法を行うことになります。

(3)ジカウイルス感染症

南米の他、アジア地域でも発生が増加しており、マレーシア国内でも流行地域への渡航歴の無い患者の発生が報告されています。デング熱と同じ蚊がウイルスを媒介しますので、防蚊対策が重要です。また、母胎から胎児への感染(母子感染)輸血や性交渉による感染リスクも指摘されています。こうしたリスクを考慮し、流行地域に滞在中は、症状の有無にかかわらず、性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えるようご注意ください。
また、流行地域から帰国した男女は、症状の有無にかかわらず最低6か月間、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えるようにしてください。なお、性行為による感染は、男性から女性パートナーのみならず、女性から男性パートナーへの感染例も報告されています。
ジカウイルスに感染してから発症するまでの期間(潜伏期間)は2~12日であり、主に2~7日で、およそ2割の人に発症すると言われています。発症すると軽度の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、斑丘疹、疲労感、倦怠感などを呈しますが、一般的にデング熱やチクングニア熱より軽症と言われています。
妊娠中又は妊娠予定の女性が感染すると、母子感染によって胎児に小頭症等の先天性障害を来す可能性が指摘されています。現在、ジカウイルス感染症には有効なワクチンや特異的な治療法はなく、対症療法が行われます。ジカウイルス感染症が流行している地域で蚊に刺された後に発熱が続く、または発疹が出るなど、ジカウイルス感染症を疑う症状が現れた場合には、医療機関への受診をお勧めします。

(4)日本脳炎
都市部で感染することは少ないものの、一年を通して散発的に発生しています。特に、サラワク州では、10月〜12月を中心に患者が多く発生しています。日本脳炎は発症した場合その20~40%が死に至ります(突然の高熱、頭痛、嘔吐や意識障害)。流行地域を訪れる場合は予防接種をお勧めします。

(5)マラリア
都市部で感染することはまずありませんが、半島内陸部、特に森林地帯では現在も発生しています(ボルネオ島のサバ州やサラワク州の森林地帯の限られた地域、半島内陸部など)。マラリア原虫に感染している蚊(ハマダラカ。夜間に活動する)に刺されることで感染します。

マラリアにもいくつかの種類がありますが、その中でも重症度が高い熱帯熱マラリアは、潜伏期間(感染しているが症状がまだ出ていない期間)が約1~2週間(ほとんどが1ヶ月以内に症状が出ます)あり、突然の高熱がおこります。治療はメフロキン、アーテスネイトなどの抗マラリア薬を使用します。

治療開始が遅れると脳や腎臓への影響が出てしまい、死亡する危険性があります。通常の観光旅行や都市部での滞在では感染の危険性はまずありませんが、トレッキングツアーやエコツアーなどの自然と触れ合う場合には、虫除け対策をしっかりと実施してください。

(6)狂犬病
マレーシアでは、2017年以降、国内の一部の地域(東マレーシアに位置するサラワク州)で感染が確認されており、感染例のほぼ全例で死亡が報告されています。犬に限らず野生動物には不用意に接触しないようにしてください。

万が一接触し感染の恐れがある場合には、速やかに医療機関を受診して適切な処置を受けてください。狂犬病は発症するとほぼ100%死亡する疾患です。犬などに噛まれた場合、必ず当日中に病院を受診し、ワクチンの接種などについて相談してください。

(7)レプトスピラ症・類鼻疽(るいびそ)
都市部でのリスクはあまり高くありませんが、熱帯地域では、カヤックなど水に関連するレクリエーションでレプトスピラ症にかかることがあります。2000年には、ボルネオ島での冒険レースに参加した旅行者が集団感染したとの報告がありました。また、類鼻疽(るいびそ)のリスク地域でもあるので、川で泳いだり、特に雨季に土に触ったりしないようにしましょう。 

レプトスピラ症は2日~3週間の症状のない期間のあと、頭痛、発熱、悪寒、筋肉痛、吐き気、下痢や腹痛などが現れたり、皮疹が現れることがあります。重症になると体が黄色くなり(黄疸)、多臓器の機能が障害される、ワイル病と呼ばれる症状を呈することがあり、この場合、最悪死に至ることがあります。抗生物質で治療します。

類鼻疽は数時間~21日間の症状のない期間のあと、発熱を主とする様々な症状が現れ、早い場合発病してから48時間程度で死亡します。何年も経過した後、突然皮膚が化膿したり、重い肺炎を起こしたりすることもあります。抗生物質の投与を主とする集中治療が行われます。

(8)ポリオ
マレーシアでは、2000年にポリオ根絶を宣言していましたが、2019年12月、東マレーシアに位置するサバ州において、27年振りとなるポリオ感染者が確認され、現在までにサバ州で4例が報告されています。マレーシア政府によるポリオ予防接種キャンペーンや環境調査等の措置が執られているものの、現在、特効薬などの確実な治療法はないため、サバ州へ渡航予定の方は、追加の予防接種を検討してください。

(9)その他の感染症
腸チフス(チフス菌がついた飲食物から感染。発熱だけが症状のこともあります)、A型肝炎・B型肝炎といった病気も東南アジアでは一般的に見られています。A型肝炎は食べ物から、B型肝炎は血液・体液から感染しますが、いずれも倦怠感・発熱・黄疸(目の白い部分が黄色くなります)といった症状が出ます。腸チフス・A・B型肝炎については、予防接種がありますので長期滞在される場合は、接種しておくことをお勧めします。(都市部の私立病院・クリニックなどで接種できます。)

 

健康上心がけること

(1)飲食について
水道水を含め生水は飲まない、加熱した料理を冷めないうちに食べるといった基本的なことは守ってください。年中夏なので、食べ物を常温で置いておくと食中毒が起きやすいので注意。また手洗い・うがいも日頃から習慣としておくことが大事です。

(2)熱中症
気温が高く、日差しも強いため脱水傾向になりがちです。ミネラルウォーター等による十分な水分補給に努めてください。また発汗により体から塩分も抜けていきますので、水だけでなくスープやスポーツドリンクなどもとったほうがよいでしょう。

(3)蚊に刺されないように
長そで・長ズボンの着用や、虫除けスプレーを使用するなどの注意が必要です。

(4)無理のない日程で
特に短期の旅行の場合には、あまり予定を詰めすぎないように、また、ホテルで就寝時にクーラーをかけ過ぎてのどを痛める人が多いので注意してください。

 (5)必要な薬は持参
常用している薬は十分量を日本から持参してください。また、常用している薬があれば、その医薬品名(一般名)の英語訳と一日の処方量などのメモを持参されることをお勧めします。

(6)交通事故
道路事情は、時間によって大変混み合います。特に朝夕のラッシュアワー、昼休みの時間帯及び雨天時などの主要道路は交通渋滞となります。運転マナーは悪く、特に割り込みや無理な追い越し運転が多く、バス、オートバイの無謀運転も多いので、十分な注意が必要です。

(7)海外旅行傷害保険の利用
設備の整った私立病院・クリニックは支払い能力のない人は診察してくれません。海外での治療費は日本と比べ高額ですので、海外旅行傷害保険に加入しておくことをお勧めします。
(8)帰国後の注意
帰国後に発熱・下痢等の症状があり医療機関を受診する際は、感染症専門の病院外来を受診し、必ず東南アジアに行っていたことを伝えてください。海外旅行に行っていたことを伝えることが早期診断・治療につながります。

もしもの時のマレーシア語

※注 以下の発音のカタカナ標記は便宜上のものであり、実際の発音とは異なることがあります。

単語(もしもの時のマレーシア語)

 

医師doctor (ドクトル)
飲み薬ubat (ウバット)
注射cucuk (チュチュック)
頭痛sakit kepala (サキット・クパラ)
胸痛sakit dada (サキット・ダダ)
腹痛sakit perut (サキット・プルット)
下痢cirit birit (チリット・ビリット)
発熱demam panas (デゥマム・パナス)
吐き気muntah (ムンター)
luka (ルカ)

短文(もしもの時のマレーシア語)

 

具合が悪い。Tak berapa sihat. (タッ・ブラパ・シハット)
ここが痛い。Sakit di sini. (サキット・ディ・シニー)
病院へ連れて行ってください。Tolong bawa ke hospital. (トロン・バワ・ク・ホスピタル)
大使館に連絡してください。Sila hubungi Kedutaan. (シラ・フブンギ・クドゥタアン)
やめてください。jangan lakukan. (ジャンガン・ラクカン)

 

 

[参考] 外務省「世界の医療事情」>マレーシア

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