初めてのワシントンD.C.生活で知っておきたい基本知識

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 ワシントンD.C.の基本情報

ほとんどが連邦政府職人
数十万人の公務員が住む街

  アメリカの首都ワシントンD.C.は、メリーランド州とバージニア州に周囲を囲まれていますが、50州の州に属さない連邦政府直轄の独立行政区です。一番近い大都市は、メリーランド州のボルチモアです。

 歴史的にみると、1776年にアメリカは独立宣言をし、合衆国としての歴史をスタートさせます。当時の首都はニューヨーク、その後フィラデルフィアという順で移転し、合衆国3番目の首都になります。この特別なエリアは、1788年にメリーランド州より独立、翌1789年にはバージニア州より独立し、1801年に正式に首都となりました。
 街の産業としては製造業はあまりなく、第一の産業は観光で、最大の雇用主は連邦政府です。 連邦政府の職員は、ワシントンD.C.の就業者数の約45%を占めています。数十万人の公務員が住む町というのも、この土地ならではの特徴です。
 人口構成は、黒人が約51%、 白人が約39%、ヒスパニックが約9%、アジア系が約4%、その他が4%です。リベラルな気風が手伝ってか、成人人口の約10%がLBGTであるというデータもあります。

 ワシントンD.C.は、年間数千万人もの観光客が訪れることでも知られています。アメリカの政治の中心地で、ホワイトハウス、国会議事堂、最高裁判所などの連邦政府の機関が集中している他、中心部にあるナショナル・モールには、世界最大の博物館・美術館を総括する機関、スミソニアン博物館群があります。自然史、航空宇宙、アフリカ美術、アメリカ歴史、フーリア美術館、アメリカ美術、肖像画美術、郵便博物館などが連なっていて、入館料無料で見学できるというのが嬉しい特徴です。
 スミソニアンの動物園は、モールから北に数キロ離れたところにありますが、そちらも無料です。ジョージ・ワシントン大学、ジョージタウン大学、フィリップス・コレクション、ケネディセンターなども魅力的なスポットです。

 アメリカは他国と比べて歴史が浅く、新しい施設などが多く集まっています。ロサンゼルスやニューヨークからは、流行りのスポットや世界最先端が発信され、世界中から多くの人が集まります。ワシントンD.C.はそんなアメリカの中でも、比較的歴史深い施設が集まっていて、街並みもヨーロッパのような古い歴史ある建物を利用しリノベーションするなど、景観にもこだわっているのが特徴です。

ワシントンD.C.四季折々の楽しみ方

 ワシントンD.C.は、日本のように四季がはっきりしています。それぞれの楽しみ方をご紹介します。春は3月中旬のモクレンに始まり、桜、マメナシ、ハナミズキなどの開花で、街が一気に鮮やかになります。中でも華やかさと儚さを兼ね備えた桜は人気です。1912年に、日米親善で当時の東京市から寄贈されたソメイヨシノが、タイダル池周辺で1,400本、市内は3,600本を見ることができます。その時期に行われる全米桜祭りは、ワシントンD.C.で最も人気のあるイベントです。
 夏は、イベントやパレードが目白押し。独立記念日は、他の大都市と比べると地味ですが花火も上がります。一番盛り上がりを見せるのが、6月上旬のキャピタル・プライド・パレードで、性的マイノリティとその支持者のパレードです。LGBTQの方々は西海岸に住む傾向が高いのですが、ワシントンD.C.首都圏もLGBTQの方々が多く住む地域として知られています。
 市内の1/3が緑地帯という公園都市で、落葉樹が多いこともあって秋には市内の至る場所で紅葉が見られます。高級住宅地ジョージタウンは、その街並みも相まってこの時期に散策するにはうってつけです。紅葉のメッカ シェナンドア国立公園のスカイラインドライブ(車両専用道・市内から車で1時間半) の見頃は10月中下旬、東海岸随一と言われるルーレイ鍾乳洞を含め良いドライブコースになっています。
 冬の名物は、ホワイトハウスと連邦議事堂のクリスマスツリー。二大クリスマスツリーとして知られ、特にホワイトハウス南側にあるツリーは別名「大統領のクリスマスツリー」として、ファーストファミリーが点灯式を行う事でも有名。近年、人気を集めているのが、欧米ブランドが集積した商業施設シティ・センターのツリーです。近くのペンクォーターではホリデーマーケットも行われます。

参考:リンクUSA

参考:ワシントンDCライフライン

参考:ハナセル

参考:リダックくらぶ

参考:TABIPPO.NET

ワシントンD.C.衛生・医療事情一般

世界最高水準の医療だが自由診療制ゆえに高額

 首都ワシントンD.C.及びその近郊は、北緯39度付近に位置し、夏は高温多湿でしばしば激しい雷雨となることもある一方、冬の寒さは東京よりも厳しく、厳寒期にはポトマック川が氷結することもあります。時には降雪のために道路状況が悪くなり、官庁・学校等、公共機関が休業になることもあります。

衛生事情


 ワシントンD.C.およびその近辺は、緑が多く大気汚染の問題はありません。上水道の水をそのまま飲用しても安全であるとされていますが、ワシントンD.C.、メリーランド州、バージニア州を流れるポトマック川では、沈殿汚染物等による水質低下が危惧されています。

 また、時にレストラン等で食中毒が発することがありますので、生ものには注意してください。米国でも食品汚染が問題になっており、腸管出血性大腸菌(病原性大腸菌O-157等)、リステリア症、サルモネラ菌感染なども発生し、随時、米国疾病予防管理センター(CDC)や米国食品医薬品局(FDA)から警告が発出されています。

医療事情


 米国の医学が世界最高水準にあることに間違いはありませんが、日本と違って診療報酬制度が定められておらず、自由診療制であることにより、米国の診察・治療費は非常に高額となります。

(a)診療

 通常、全ての診察は予約制で、当日や翌日に予約を取ることは難しく、1週間先になることも珍しくないため、予約は早めに取ることをお勧めします。急病時に受診出来る医療機関は、予約無しで受診出来る病院の救急部(ER:Emergency Department)、もしくはImmediate Care(Walk-in Clinic、Urgent Care等とも言います)と呼ばれる外来診療のみのクリニックに限られます。病院の救急部(ER:Emergency Department)はいつも患者が多く、重症者が優先されるため、軽症者は数時間待たされることになります。

(b)救急車
 重症と考えられる急病や大怪我の場合は、「911」(日本の119番に相当しますが、警察や消防も同じ番号)に電話をかけ、“Ambulance, please.”と言って救急車を要求します。平均5分程度で救急車が到着しますが、救急車がすぐに対応できないときには、消防車の救急隊が代役となって駆けつけ、救急車が到着するまでの代役を果たしています。米国の救急医療制度は良く整備されていますので、Emergency Medical Technician (EMT)が患者の状態により移送すべき適切な病院を判断します。

(c)米国の保険
 日本のような国民皆保険制度がなく、民間医療保険の保険料も高額となります。米国の保険に加入する場合は、その保険の提供会社及び種類(契約内容)によって、対応する医療機関やカバーされる医療行為に大きな違いが生じます。加入前に細部まで確認のうえ、十分に検討することが大切です。
 当地では医師の専門分野が細分化されているので、病気によっては数人以上の医師にかかる必要があることもあり、診察、治療、支払い等個別に対応しなければなりません。

(d)海外旅行損害保険
 非常に高額な米国の医療費に備え、海外旅行傷害保険等には、十分な補償額で加入しておく必要があります。なお、海外旅行傷害保険等のキャッシュレスサービスを利用する場合は、DC周辺地域にあらかじめ提携を標榜している医療機関はないため、事前に加入先の保険会社に連絡を取って、同サービスに対応してくれる医療機関の紹介を受けなくてはなりません
 また、米国の保険に加入していない場合、医療機関受診に際し、受付で診療費の支払い能力を問われることがありますので、現金、クレジットカード等、支払い能力を十分証明出来る物を持参してください。

(e)通訳の利用
 英語が堪能で医学専門用語は分かりにくいため、意思疎通が十分とれない場合もあります。大きな病院では、日本語通訳サービスを無料で行っている病院も多く(最近は、電話での通訳サービスが多くなっている)、同サービスの利用を検討してください。なお、通訳者を利用したい場合には、あらかじめ予約しておくことが必要です。

ワシントンD.C.でかかりやすい病気・ケガ


 年間を通して上気道炎が見られます。また、3月から6月にかけて花粉症が見られます。日本では通常見られず、当地に特有な病気として、蔦漆(ツタウルシ、一般にPoison Ivyと呼ばれています)による接触性皮膚炎、ライム病というマダニが媒介するスピロヘータによる感染症、夏季の蚊が媒介するウエストナイル・ウイルス熱・脳炎などが有名です。また、狂犬病がワシントン周辺でもキツネやアライグマ等の野生動物に見られることにも注意が必要です。

(1)Poison Ivy(ツタウルシ)による接触性皮膚炎

 身近にある毒性の強い草で、3枚の葉が1組になって枝についています。Poison Ivyの毒性はウルシと同じウルシオールという物質によるもので、これが原因でかぶれます。最初はこの草に触った手足や顔にうすくブツブツが出来ますが、しだいに広がり、水疱を作ります。Poison Ivyと思われる草に触れた場合には、その部分をできるだけ早く十分に水洗いをしてください。痒みは氷で冷やすことや冷たいシャワーを浴びることで和らげることができます。
 全米でも、毎年1,000〜5,000万人の人たちがPoison Ivyの被害にあっているという報告もありますが、そのうち10〜15%の人がウルシオールに対する感受性が極めて高く、重症化することがあります。顔や腕なども腫れてくることがあり、このような場合には皮膚科の受診が必要となります。

(2)ライム病
 Ixodes と総称されるマダニ(通称シカダニ)の仲間に吸血されて、B. burgdorferiという人獣共通の細菌(スピロヘータ)に感染し起こる病気です。米国東北部に多く、マダニの吸血活動期である春から夏にかけて発生し、毎年25,000人以上が感染していると言われています。
 米国東北部の感染地域に位置する、ワシントンD.C.周辺のメリーランド州やバージニア州はハイリスク地域とされていますので、注意が必要です。病原菌を持ったマダニに咬まれてから 3〜32日後に紅斑、リンパ節の腫張やインフルエンザ様の症状が出てきます。
 その後、髄膜炎、多発性神経炎等の神経症状、不整脈等の循環器症状、関節痛、関節の腫張等の関節炎症状をきたすことがあります。治療には抗生物質が有効です。(参考情報:http://www.aldf.com

 

(3)ウエストナイル感染症
 野鳥がウイルスの運び屋となり、ウイルスを保有した野鳥の血を吸った蚊に人が刺されて感染する病気です。米国では、1999年にニューヨークで初めて患者が発見されました。2019年には全米で958人の感染が報告され、54人が死亡しています。
 ワシントンD.C.で11人(死亡者なし)、メリーランド州で6人(死亡者なし)、バージニア州で6人(1人死亡)の発生がありました。また、米国疾病予防管理センター(CDC)は流行期には、時間を追って患者発生の様子を知らせてくれますので情報を得てください。(参考情報:http://www.cdc.gov/ncidod/dvbid/westnile/

ワシントンD.C.で健康上心がけること

(1)当地では、リクリエーションやスポーツ施設等、健康管理の面で条件に恵まれていると言えます。他方、公共交通手段が少なく自動車で移動する生活となることと、レストランなどの外食は、一般に量、脂肪、塩分が多いので、過食と運動不足から肥満傾向になりやすく、生活習慣病の原因となることがあります。その予防対策として、日常生活の中に運動を取り入れ、食事内容に注意し、過食を避けるように工夫する必要があります。

(2)在留邦人はワシントンD.C.を中心に、メリーランド州やバージニア州にまたがる広い地域に分散して居住していますので、所属する組織を超えて邦人同士が接触する機会は、比較的限られます。ストレス解消法を工夫し、現地の人々との交流に努めるなど、精神衛生面に配慮する必要があります。

 

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