初めてのメキシコ生活で知っておきたい基本知識

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メキシコの基本情報

古代文明とスペイン文化を取り入れ独自に進化
多くの日本企業が進出する友好国

メキシコは正式名称をメキシコ合衆国といい、32の州で構成されています。国土面積は196万平方キロメートル、日本の約5倍です。北アメリカの南部に位置し、国土の西側は太平洋、東側はカリブ海とメキシコ湾に面していて、大きく4つの地域に分けられます。サボテンが林立する北部の砂漠乾燥地帯、メキシコ観光の中心地である中央高原地帯ジャングルのある南部熱帯雨林地帯、世界のセレブがこっそり訪れる太平洋岸ビーチ・リゾートです。

首都はメキシコシティ、他にグアダラハラ、エカテペック、プエブラ、アカプルコ、カンクン、ロスガボス、ティファーナ、メリダ、タスコなどの都市があります。ほとんどの地方は標高1,000メートル以上に位置し、気候は標高によって異なります。北部は乾燥していて夏と冬の気温差は激しい一方で、南部は1年中高温多湿です。降水量も地域によって大きな違いがあります。

人口は約1億2,601万人(2020年国立統計地理情報院(INEGI))、世界10位の人口を抱えます。民族は、先住民と欧州系(スペイン系等)の混血60%、先住民30%、欧州系(スペイン系等)9%、その他:1%です。宗教は、国民の約8割がカトリック教徒です(2020年INEGI)。

在留法人数は12,600名(2019年10月現在)、日系人数は7万6千名以上。日本企業の進出が目覚ましく、日系企業数は1,182拠点(2017年現在)で、地域別での拠点数では台湾を抜いて11位になりました。2008年には366拠点でしたから、短期間で大幅に増加していることが分かるでしょう。特に自動車産業が盛んで、多くの日本メーカーがメキシコに工場を置いています。

太平洋を挟んで約1万kmの距離にあり、文化も大きく異なるメキシコですが、日本とは400年以上に渡って良好な関係にある国です。交流は1609年に始まり、鎖国により交流が途絶えましたが、1888年11月30日に条約を結び正式な外交関係が樹立されました。日本がアジア以外の国と平等条約を締結したのはこれが初めてでした。第二次大戦中の一時中断を経て1952年に再開されました。2017年には日本人メキシコ移住(1897年)120周年、2018年には日墨外交関係樹立130周年を祝賀する諸行事が実施されました。

遺跡やアートに料理
見所は多いが深刻化する治安問題

古代、メキシコの地ではオルメカ文明やマヤ文明、アステカ文明といった文明が栄え、今でも当時の遺跡を見ることができます。コロンブスがアメリカ大陸を発見すると、アステカ帝国は16世紀初頭にスペインによって滅ぼされ、300年の植民地時代が続きました。そのため、国が定める公用語はありませんが、現在でも最も多くの人が使う共通語はスペイン語です。何割かは、ナワトル語やマヤ語といった50以上の先住民の言語が話されています。

そんな中でもメキシコは、スペインの文化を取り入れながら新たな伝統を生み出してきました。特にタコスやモーレなどのメキシコ料理は独自の進化を遂げ、その土地ならではの伝統的な食文化を楽しめることから、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。

芸術が盛んなこともメキシコの魅力。マヤ族やアステカ族の文化に根を持ち、古くから音楽や絵画、彫刻など芸術面で世界的に有名な人物を輩出しています。ユネスコの世界遺産に登録された自然・文化遺産は30件を超え(2019年4月時点)、観光名所として多くの人で賑わっています。

見所が多いメキシコですが、現在治安問題が深刻化していて日本人が被害者となるケースもしばしばあります。スリやひったくりといった軽犯罪から、強盗や短時間誘拐のような危険犯罪まで、昼夜を問わず発生しているのが現状です。メキシコでは、常に防犯意識を高めておかなければなりません。クレジットカードやキャッシュカードは持ち歩かない、夜の一人歩きはしない、などを徹底することが大切です。
注意すべきポイントは出歩くときだけではありません。知らない人を家に招いたりすると、空き巣に合う原因になることもあります。家事手伝いを頼みたいときなどは、経歴に信頼がおける人に限定しましょう。また、タクシーを使う際にも用心が必要です。流しのタクシーは利用せず、ホテルやレストランで呼んでもらった方が安全です。

参考:レバレジーズキャリアメキシコ

参考:日本成人病予防協会

参考:外務省 人口の多い国

メキシコの衛生・医療事情

深刻な大気汚染と高山病に注意
若い人でも無理は禁物

メキシコの気候は緯度、高度、山脈の走行、海流などの要因により多様性に富んでいます。北部は乾燥していて夏と冬の気温差が激しい一方、南部は1年中高温多湿です。首都メキシコシティは標高2,240メートルの高地であり、気候は年間を通じて温暖で、最も寒冷な12月と1月で東京の秋程度、一番暖かい4月から7月で東京の初夏程度です。1年は11月~4月の乾期と5月~10月の雨期に大別できます。

メキシコシティでは1990年代初めより大気汚染が深刻で、特に乾期の光化学スモッグが問題となっていたため、ディーゼル車の制限や排気ガス点検の義務化等の規制が強化され改善に向かいつつありました。しかし2015年に規制が一部解除されたことなどにより再び大気の状態が悪化したため、年によっては4月から6月の間、車両の走行制限が行われる日があります。メキシコシティ以外の主要都市でも大気汚染レベルは基準を大きく超えているところがあり、慢性呼吸器疾患を持つ人は注意が必要です。

 

医療レベルは一定の水準にあり、都市部の私立病院の中には、日本やアメリカと比較しても遜色ない設備の整った病院もあります。ただし、公立病院においては、患者が集中し、加えて予算不足による機材や設備の老朽化、医薬品の不足が問題となっており、満足な治療が受けられない場合があります。このため、生活に余裕があるメキシコ人や、ほとんどの日本人は私立病院を受診します。

メキシコシティや他のいくつかの都市には、日本人または日系人の医師がいて、日本語で診療を受けることが可能な場合もありますが、通常の病院では医師以外は英語の通じない病院スタッフがほとんどです。私立病院での医療費支払いはクレジットカードが利用可能ですが、医療費は概して高額です。

例を挙げると診察が1万円(検査・薬代は別会計)、血糖検査1,500円、腹部超音波検査2万5千円、胸部X線検査4千円、MRI検査9万円、上部消化管内視鏡検査(麻酔科医への報酬を含む)10万円などです。また、入院した場合の室料は一泊1万円から8万円程度、集中治療室は室料だけで一泊15万円程度です。

注意点として、救急外来受診時には、受診前にデポジットを支払う必要があり(5万円程度)、入院が必要になると約25万円の前払いを要求される可能性があります。支払いできない場合は診察を拒否されることがあります。従って、十分な額を補償する海外旅行傷害保険に加入しておくことをおすすめします。処方箋が出された場合、市中の薬局で処方箋を示して購入することになります(院内処方の病院もあります)。薬局によっては医師が常駐し、400円程度で診察と処方箋の発行を行います。

メキシコでかかりやすい病気・ケガ

(1)高山病

標高2,240mのメキシコシティをはじめ、標高が2,000mを超えると軽症の高山病に悩まされることがあります。高山病発症には個人差があるため、元気な若者でも症状が出ることがあります。頭痛、吐き気、腹部膨満、動悸、息切れ、倦怠感、不眠等の症状が多く見られます。対策は、無理に動き回らず十分な休息をとること、アルコール摂取を控えることや水分を多めに摂取することです。症状が続く場合は低地への移動を検討してください。

 

(2)腸管感染症(嘔吐下痢)

メキシコの疾病統計では、サルモネラ(チフス、パラチフスを含む)や赤痢などの細菌性腸管感染症、ロタウイルスやノロウイルスなどのウイルス感染症、回虫やギョウ虫などの寄生虫疾患、およびアメーバ赤痢やジアルジア症などが報告されています。メキシコでは、上記のような重症化しやすく病院受診が必要な腸管感染症以外に、数日で自然治癒するような嘔吐や下痢は頻発しています。

一見すると衛生的にみえる店舗でも腸管感染症にかかる人もいますので、当地の外食は腸管感染症の危険性が否定できないとお考え下さい。排便回数が非常に多い、腹痛が激しい、38.5℃以上の発熱を伴う、血便がある、のうちどれか一つでも該当するときは病院での相談をご検討ください。下痢が長引くときも病院受診をお勧めします(メキシコ人には市販の駆虫薬を定期的に飲む人も少なくありません)。

 

(3)呼吸器感染症

メキシコシティは年間を通じて空気が乾燥しており、特に乾期では湿度が20%を下回ることもあります。加えて大気汚染の問題もあるため、呼吸器感染症にかかると長引く傾向にあり、ときに咳が1ヶ月以上も続くことがあります。喘息等の慢性呼吸器疾患・アレルギー性疾患を持つ人は、メキシコ渡航前に主治医とよく相談する必要があります。

(4)デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症

これらの3つの疾患は、それぞれの病原ウイルスを保有する蚊に刺されることによって感染します。蚊の種類はこれら3つの疾患で共通しており、昼行性のネッタイシマカとヒトスジシマカの2種類です。これらの蚊はメキシコの低地や海岸地域に生息しており、疾患の発生地域とほぼ一致します。メキシコシティでは、これらの疾病の発生報告はほとんど見られません。

これらの疾患の予防には蚊に刺されないことが最も重要ですので、適切な昆虫忌避剤(虫除け)を使用するなどして蚊に刺されない工夫をしてください。ジカウイルス感染症は、妊婦への感染による胎児の神経系の発達異常(小頭症)が問題となっています。ジカウイルス感染症は蚊による感染以外に性行為による感染も多く報告されており、症状がみられない不顕性感染も多いので、本人あるいはパートナーが流行地域に滞在した場合は、少なくとも6ヵ月間、妊娠を避けることが大切です。

 

(5)インフルエンザ

メキシコでは日本と同様に、A型とB型双方のインフルエンザがみられます。ほぼ一年を通じて感染の可能性がありますが、大きな流行は日本と同様、乾燥して気温が下がる12月から3月の間に発生しています。このため、同期間にあわせて予防接種をしておくことも有用です。

 

(6)A型肝炎

A型肝炎はメキシコでは比較的身近な疾病で、飲食物を介して感染します。子供の時に感染すると無症状あるいは軽症に終わることが大半で、この一回の感染で生涯、免疫力が持続するとされています。このため、流行地であるメキシコに住む人(特に大人)はA型肝炎の免疫を有し、A型肝炎を発症しない人がほとんどです。しかし、免疫を持たない渡航者がメキシコ人と同じような生活をすると、A型肝炎を発症する危険性があります。ワクチンで予防可能です。

 

(7)マラリア

当地では三日熱マラリアがほとんどで、マラリアが重症化して死亡する危険性は高くありません。海岸地域に多くみられ、2017年はチワワ州、シナロワ州、ナジャリト州、タバスコ州、カンペチェ州、キンタナ・ロー州、チアパス州、サンルイス・ポトシ州で合計715人の発症報告がありました。

このようにメキシコはマラリアの多発地帯ではありませんが、 (4)のデング熱などと同様、蚊が媒介する病気(ただし病原体を運ぶ蚊は異なり、夜行性のハマダラカです)ですので、防蚊対策を心がけて下さい。

 

(8)サソリ

サソリはメキシコ全土で日常的に見られます。サソリは夜行性で、屋内にも侵入し、物陰やたたんだ衣類、靴の中などに潜んでいます。天井から落ちてくることもあります。特にハリスコ州(約年間5.2万人)、グアナファト州(同4.6万人)、ゲレロ州(同4.1万人)でサソリ刺傷の報告が多く、またこれらの地域には毒性の強いサソリが分布していると言われています。

メキシコシティでもサソリ刺傷はありますが、年間400人程度です(しかし、幼稚園の敷地内に出没するなど、油断は禁物です)。致命的になることはまれですが、全身症状が出ることが多いため、刺された場合は速やかに病院を受診し、必要であればサソリ毒に対する抗毒素投与を受けて下さい。刺したサソリを病院に持って行くと治療の参考になります(無理に捕まえようとする必要はありません)。

 

(9)犬咬傷と狂犬病

メキシコでは毎年、犬に咬まれて病院を受診する人が相当数10万人以上の場合も)います。ただし、犬に咬まれたことによる狂犬病の発症は近年報告されていません。犬以外の家畜や野生動物との接触による人の狂犬病の発生は、ごく少数ではありますが報告されています。狂犬病は発症するとほぼ致命的ですので、犬を含めあらゆる動物に起因する怪我を負った場合は、速やかに病院を受診して適切な治療を受けてください。

(10)交通事故

メキシコでは、日本のように運転教習を経ずに運転免許が取得できるので交通ルールを理解していない運転者も少なくなく、歩行時はたとえ青信号でも往来する車に十分に注意して道路を横断する必要があります。自分で運転する時にも、他者の無謀運転の巻き添えにならないよう十分に注意してください。また、道路は陥没していたり、マンホールの蓋がないまま放置されていたりすることがあります。歩道も同様に穴があいていたり、基礎工事の金属棒が飛び出していたりしますので十分注意してください。

 

健康上心がけること

 

(1)加熱調理されたものは熱いうちに食べ、生ものは避けましょう。

(2)飲料水は市販のボトル入りのものを飲みましょう。

(3)メキシコは国土が広いため気候も多種多様で、加えて高度差や時差ぼけなどにより疲労が蓄積しやすくなります。余裕を持ったスケジュールで行動してください。

(4)メキシコシティでは一時期より改善したとはいえ、大気汚染が深刻です(特に乾期)。交通量の多い地域を長時間歩くことは避けましょう。また、帰宅後はうがいや手洗いを励行してください。

(5)高地では紫外線が強いので注意が必要です。皮膚炎、色素沈着、皮膚癌、結膜炎や白内障の原因になります。外出時は日焼け止めを塗り、帽子やサングラスを着用しましょう。

 

 もしもの時の医療スペイン語

(※注 以下の発音のカタカナ標記は便宜上のものであり、実際の発音とは異なることがあります。)

医療スペイン語 語彙

医師          Medico (メディコ) ,Doctor (ドクトール)
女医   Doctora (ドクトーラ)
飲み薬Medicina (メディシーナ) Medicamento (メディメント)
注射Inyección (インジェクシオン)
酸素Oxigeno (オクシヘノ) 

医療スペイン語 -症状

頭痛Dolor de Cabeza (ドロール・デ・カベッサ) Jaqueca (ハケカ)
胸痛Dolor en el pecho (ドロール・エン・エル・ペチヨ)
腹痛(胃痛)Dolor de estómago (ドロール・デ・エストマゴ)
腹痛Dolor de vientre (ドロール・デ・ビエントレ)        

Doloe de barriga (ドロール・デ・バリガ) 

下痢Diarrea (ディアレア) 
発熱Fiebre (フィエブレ)
吐き気Náusea (ナウセア)
嘔吐Vomito (ボミト)
Herida (エリーダ) , rayón (ラジョン) , guayón (グァジョン) 
Tos (トス) 

医療スペイン語 -病名-

高山病Mal de altura (マル・デ・アルトゥーラ) ,Soroche (ソロチェ) 
マラリアMalaria (マラリア)
デング熱Dengue (デンゲ)
腸チフスTifoidea (ティフォイデア) 
肝炎Hepatitis (エパティティス)
破傷風 Tétanos (テタノス)
狂犬病Rabia (ラビア)
コレラCólera (コレラ) 

医療スペイン語 -短文-

具合が悪い(私) Me siento mal.(メ・シエント・マル) 

(他人)Se siente mal.(セ・シエンテ・マル) 

Estoy mal de salud.(エストイ・マル・デ・サル-)

ここが痛いMe duele aquí.(メ・ドゥエレ・アキー)
頭が痛いTengo dolor de cabeza.(テンゴ・ドロール・デ・カベッサ)
吐き気がするSiento náuseas.(シエント・ナウセア)
病院へ連れて行って欲しい。 (私)Quiero que me lleve a un hospital.(キエロ・ケ・メ・ジェベ・ア・ウン・オスピタル)

(他人)Quiero que lo(la) lleven a un hospital.(キエロ・ケ・ロ(ラ)・ジェベ・ア・ウン・オスピタル) 男性:lo 女性:la

病院へ連れて行って下さい。(私)Me puede llevar a un hospital.(メ・プエデ・ジェバール・ア・ウン・オスピタル) 

(他人)Lo(La) puede llevar a un hospital.(ロ(ラ)・プエデ・ジェバール・ア・ウン・オスピタル) 

男性:Lo 女性:La

どうぞ病院へ連れて行って下さい。Lleveme al hospital, por favor.(ジェベメ・アル・オスピタル,ポル・ファボール) 

 

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