今年4月からオランダに移住し、医療ジャーナリスト・ライターとして第二の人生をスタートされた八巻先生に、ご専門分野やオランダの医療事情について伺いました。

― オランダに移住された理由を教えてください
還暦を迎え医師としての仕事はやり切ったと感じました。第二の人生は作家として歩みたいと考え、61歳で早期退職しました。異文化からの刺激や新たな学びを求めたこと、親友が住んでいること、オランダ人の国民性やライフワークバランスの考え方に惹かれ、移住を決めました。

― 先生の専門分野や得意分野を教えてください。
長年、肝臓がんの治療に携わってきました。53歳の時、生まれ故郷（宮城県伊具郡）の国民健康保険病院副院長職に着任したことがきっかけで、地域医療と専門的に向き合えるよう外科系総合診療医として研鑽を重ねてきました。さらに旅行医学認定医、産業医、人間ドックアドバイザー、健康経営アドバイザー、スポーツドクター、パラスポーツドクター、東京2020メディカルスタッフ、国体宮城県選手団の帯同医、宮城県保険医協会理事、全国保険医団体連合会編集委員など、医師としての貢献活動を広げてきました。医療、看護、介護福祉、スポーツ分野での執筆が多数あります。

― 旅行医学認定医とはどんなものですか？
高齢者や障害者、がん患者などが旅行を楽しめるよう、アドバイスやコーディネートを行う専門医です。海外旅行の支援、登山やダイビングなどの健康リスク管理、トラベルワクチンの相談、感染症対策なども含まれます。

― オランダと日本の医療の違いはありますか？
日本では専門医が8割以上を占め、総合診療医は2%程度です。一方オランダでは35%が総合診療医で、まず家庭医（GP）を受診するのが基本です。医療費抑制や健康観にも大きな違いがあり、救急車や病院をねるべく使わず、健康とは「病を持ちながら幸せに生きること」と考える傾向があります。薬よりも食事や運動を優先する姿勢も特徴的です。

― 専門分野を選択された理由を教えてください。
手術の技術的な難しさに加え、手術以外の知識や経験も総合的に活かす必要がある点に魅力を感じました。特に、再生力に富み、神秘的ともいえる肝臓という臓器の特性と、肝臓外科の高い専門性に惹かれました。臨床で得られた疑問やデータを基礎研究に活かし、常にフィードバックを意識しながら研鑽を積んできました。

― 海外滞在中に医療に関して困った経験はありますか？
私自身は困った経験がありませんが、オランダではまずGP(General Practitioner)と呼ばれる家庭医を受診するのが一般的です。大きな病院を直接訪れても、受付すらしてもらえません。救急で訪れても、日本では考えられないほど長時間待たされます。医療費や体制、医療レベルなど、様々な点で日本との違いに驚かされます。

― 先生のご趣味やリフレッシュ法を教えてください。
パラスポーツや高齢者の生涯スポーツに関心があり、楽しみながらボランティアとして関わっています。特にサッカーが好きで、ヨーロッパや南米の試合をよく観戦します。1日4回、2匹の犬と公園を散歩しながら野鳥を観察するのが日課です。

― どんな人にヨクミルを利用してもらいたいですか？
気になる自覚症状がある方や、ご家族の健康相談をしたい方に利用いただきたいです。多様な資格と経験を活かし、幅広く対応可能です。症状が複数ある方や、原因が分からない体調不良なども遠慮なくご相談ください。海外で暮らすビジネスパーソンやそのご家族、留学生、旅行者、在オランダ日本企業の皆様のお役に立てれば幸いです。