「雷雨喘息」という言葉を聞いたことがありますか?台風が過ぎた後や豪雨後、咳が止まらないなどの症状を感じる人が多くいます。今回はこの「雷雨喘息」を探ってみました。
海外でも多く発生「雷雨喘息」とは?
アレルギーや喘息持ちではない人でも、台風や豪雨により気温変化や湿度変化、アレルゲン曝露が重なると、喘息発作を起こすことがあります。これを雷雨喘息(Thunderstorm asthma)と呼びます。
2016年11月、オーストラリアメルボルン近郊で強い雷雨が発生し、その直後から喘息発作の救急患者が急増しました。一晩で1,000件近くの救急車出動があったそうです。病院で治療を受けた人は、メルボルン周辺だけで13,000人に達し、575人もの人が緊急入院。17件の院外心停止が発生し、このうち9件(52.9%)は呼吸不全が原因と推定されました。
メルボルン大学では、1980年代から「雷雨の後にぜんそく患者が増える現象」を繰り返していることに気づき、患者にある共通点を見つけます。オーストラリアでは「ライグラス」というイネ科植物の花粉症患者が多数存在し、雷雨の後にぜんそく発作を起こしていることを発見しました。
嵐によって花粉粒子が細粒化される
イネ科植物には、カモガヤ、ネズミホソムギ、オニウシノケグサ、ハルガヤ、オオアワガエリなどがあります。繁殖力の高さゆえ、いわゆる「雑草」として世界中に広がっています。通常の花粉は粒子が大きいので、吸い込んでも眼、鼻、喉の粘膜に付着するだけで、気道の奥の方に到達することはありません。
しかし、雷雨によって湿度が上昇し、花粉が膨張すると、破裂して粒子径が通常の10分の1ほどに細かくなってしまいます。このくらいの大きさになると、終末細気管支という小さな気管支にまで花粉が到達してしまうのです。この「マイクロ花粉」とも言うべきアレルゲンが、強風とともに遠く離れた地域へ漂着し、その地域の住民の気道の奥に入ってしまうことがあります。
黄砂でも花粉が破裂されることがよく知られています。黄砂にはカルシウムイオンが多く含まれていて、このイオンによって花粉は破裂しやすくなります。また、大気中の物質が直接接触したり衝突したりすると、花粉が破裂する原因になります。これにより、喘息の悪化を招くことがあるのです。
気道の奥にまでアレルゲンが入り込んでしまうと、これまで花粉症や喘息ではなかったのに、咳などの発作が出てしまうことがあります。雷雨喘息で救急受診する人の3~5割は、これまでに喘息と診断されていない人です。
オーストラリアの例でもそうですが、喘息持ちの人が雷雨喘息を起こすと、さらに激しい発作になります。花粉症などのアレルギーを持っている人も、雷雨喘息のリスクが高いです。
「雷雨喘息」を予防するには?
まずは、「嵐の後には喘息発作が起きやすい」という認識を持って生活することが重要です。台風や豪雨の3日後くらいまでは、喘息の悪化に警戒する必要があります。特に、豪雨直後や台風一過でカラっと晴れて気温が高めになる日は外出する際、注意が必要です。
やむを得ず外出する際は、マスクを着用しましょう。コロナが終息してマスクをしない人も多くなりましたが、サージカルマスクやN95マスクなどは、雷雨などで粉々になった微細な花粉でもある程度ブロックできます。風で遠くまで微細な花粉が飛ぶこともあるので、雷雨や台風通過の翌日は、できるだけ不要な外出は避けるようにしましょう。
咳が止まらないなど気になる症状がある場合は、ヨクミルで早めにご相談ください。
【参考文献】
OyanagiAllergyClinic 「雷雨喘息」
Yahoo! 台風が通り過ぎた後の喘息発作に注意 知られざる雷雨喘息とは