咳は、吸い込んだ空気中の異物が体に入らないように、体を守るための防御システムのひとつです。風邪を引くと出やすいことはご存知だと思いますが、咳がなかなか治らず、長引くことを経験する方も多くいるようです。しつこい咳は、体力を消耗し睡眠不足になるなど日常生活にも支障をきたすだけでなく、危険な病気が潜んでいることもあります。今回は、長引く咳について探ってみました。
危険な病気が潜んでいることも!咳の主な原因
咳が長く続いても「風邪が治ってないのかな?」と軽く考えがちですが、3週間を越えて続く場合は、単純な風邪ではない可能性があります。咳の種類によって、その原因も異なります。痰が絡む湿った咳は「湿性咳嗽(しっせいがいそう)」と呼ばれ、多くは痰を気道の外に出すための防御反応として起きています。一方、コンコンと痰が絡まない咳は「乾性咳嗽(かんせいがいそう)」と呼ばれ、多くは気道の炎症や過敏反応を起こす病気が原因です。
咳の種類と主な原因
湿性咳嗽
風邪やインフルエンザなど細菌やウイルスによる感染症。長引く場合は、副鼻腔気管支症候群、後鼻漏症候群などの鼻の病気、慢性気管支炎、限局性気管支拡張症、気管支喘息による気管支漏、非喘息性好酸球性気管支炎、肺がんなどの可能性も。
乾性咳嗽
気道の炎症や過敏反応などを起こす咳喘息、アトピー、百日咳、胃食道逆流症、喉頭アレルギー、間質性肺炎、心因性、気管支結核など。
放置すると危険な「咳喘息」
長引く咳の原因で最も多く、約4割を占めるのは「咳喘息」です。近年増加していて、都心部で多いという報告があります。咳喘息は、喘息特有の「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難はなく、気道の炎症によって刺激に過敏反応を起こして、発作的に咳が出ることを繰り返します。アレルギーがある人に多く、ダニやホコリ、食品添加物、PM2.5などのアレルゲンや、深夜や早朝、季節の変わり目、冷気などに反応して症状が多く出ます。放っておくと3〜4割の人が喘息になると言われていますので、早めに治療することが大切です。
喫煙者の長引く咳は「COPD」の可能性
もうひとつ長引く咳の原因として増えているのが、COPD(慢性閉塞性肺疾患)です。「肺の生活習慣病」や「タバコ病」とも言われ、タバコの煙などに含まれる有害物質を吸収することで肺に炎症が起こり、最終的に肺機能が低下して、酸素治療が必要になったり死亡リスクが高まったりします。喫煙歴、加齢とともに発症しやすくなり、発症すると元には戻らない病気です。息切れや痰を伴う咳が続くのは、COPDの初期症状の場合があるので、早めに検査をしてください。
咳の予防と症状を和らげるセルフケア
普段から心かげたい咳の予防と、咳を和らげるセルフケアを紹介します。
(1)横向きで寝る
うつ伏せや仰向けで寝るより、横向きで寝た方が気道を確保できるため、寝ている間の咳を和らげることができます。
(2)湿度を保って気道の乾燥を防ぐ
ウイルスは乾燥すると活性化するので、湿度を50〜60%(暑い時期はカビが発生しやすいので低め)に保ちましょう。水分を摂ることと、気道の保湿と加湿を助けるのでマスクの着用もひとつの選択肢です。喉や鼻の乾燥を感じる場合は、濡れマスクにすると、喉や鼻の粘膜を潤す効果が高くなるので、さらに良いでしょう。ただし、肺に病気を有していたり、装着で呼吸困難を感じられたりする場合は、避けたほうが良いでしょう。
(3)うがいと歯磨きも有効
体内にウイルスや細菌が侵入することを防ぐので、風邪と咳の予防にうがいは有効です。普段は水で、喉が腫れているときはうがい薬を使用してうがいをするのも良いでしょう。また、寝ている間に口の中の雑菌が増えるので、就寝前と起床してすぐの歯磨きも、ウイルスや細菌の感染対策に有効です。
(4)咳止め効果が期待できる飲み物
咳が出るときは、温かい飲み物で体を温めましょう。ゆっくり飲むことで鼻やのどが加湿され、痰が出やすく呼吸が楽になります。いずれも過剰摂取は避けるようにしてください。
・緑茶 カテキンの抗炎症作用などで、アレルギー症状の軽減を期待できる。
・ココア テオプロミンという成分で、喉症状を緩和することが期待できる。
・コーヒー カフェインに気管支を拡張する作用や抗炎症作用の報告がある。
・しょうが ジンゲロールという成分が体を温め、喉の痛みを緩和する効果がある。温かいお茶やお湯に入れて飲む。
・ハチミツ 抗炎症作用や抗菌作用が咳を改善する。温かいコーヒーや紅茶に入れたり、お湯に溶いてお好みで生姜やレモンを加えたりして飲む。※1歳以下の赤ちゃんには与えない。
長く咳が続いているとき、気になる症状があるときは、早めにヨクミルで相談してください。医療機関を受診する目安、市販薬の選び方などの相談もできます。