【医師監修】日本人の1000万人以上が悩む便秘 原因とすっきりできる解消法を医師がアドバイス

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「便秘」で悩む人は、日本全国で1000万人以上と言われています。海外滞在中の日本人の方は、日本と異なる環境や食生活で便秘になることも多いと思います。最近の研究では、便秘は命に関わることもある病気だということが明らかになってきました。体質だと放置しないで、適切な治療が必要です。便秘の原因と解消法について、医師に解説してもらいました。

便秘とはどんな状態?

本来便通は、毎日あるのが健康な状態です。「便を十分量かつ快適に排出できない状態」が便秘と定義され、目安としては週に3日未満の場合、便秘が疑われます。便が硬く少ししか出なくて残便感がある状態も便秘と呼びます。
慢性の便秘で悩んでいる人は、脳卒中による死亡者が通常の2倍以上、心筋梗塞などの死亡者も1.5倍以上というデータもあり、便秘によって寿命が短くなる可能性があることを明らかにした海外の研究もあります。また、便秘が続くことで、うつや不安などの心理的な影響が生じたり、日常生活に支障を来したりする場合がありますので、早めに解消しましょう。

便秘になりやすい人はどんな人?

厚生労働省が行った国民生活基礎調査の結果をグラフにしました。20代~30代の女性に一度便秘のピークが訪れますが、その後は、男女共に加齢に伴って便秘の頻度は増加します。そして80歳以上では、男女ともに約12%が「便秘症状がある」と自覚しています。

厚生労働省 国民生活基礎調査の概況(平成28年)

男性より女性の方がなりやすい

女性ホルモンのひとつ「黄体ホルモン」は、身体に水分や塩分をため込もうとして、大腸のぜん動運動をゆっくりにする働きがあります。女性は男性より腹筋が弱いこと、食事量が少ないことなども関係しています。また、無理なダイエットで食物繊維や水分、脂肪分を減らすと、ぜん動運動に影響があり、便が硬く排出されにくくなります。

年齢とともに便秘になりやすい

加齢によって筋力が衰え、排便の力が弱まるため便秘になりやすくなります。食事量や運動量が減ることで、生理的機能の低下などの原因でも起こります。また、加齢とともに便意を感じづらくなるため、適切なタイミングで排便を行えず、結果として便秘につながることがあります。

日常生活が忙しい人

時間がなくて食事を抜いてしまう、食事のバランスが悪い、ゆっくりトイレタイムが持てないなどが原因で、忙しい人は便秘を引き起こしやすい傾向にあります。行きたくてもトイレを我慢してしまうと、一時的に排便しづらくなり、便意を感じづらくなることもあります。

便秘のタイプとその原因

便秘には、下記のような種類と原因があります。それぞれのメカニズムを解説します。

大腸や直腸の働きの異常による「機能性便秘」

便秘の中で最も多いタイプです。生活習慣やストレス、加齢などの影響で、便が作られる過程や排便の仕組みに障害があるケースです。下記の3タイプがあります。

1 弛緩性便秘

加齢や運動不足などで腹筋が弱くなったり、刺激性の便秘薬を乱用したりしたことによって、大腸のぜん動運動の動きが低下して便を押し出せなくなり便秘になります。朝食を食べない、運動不足などの乱れた生活習慣による便秘もこれに当たります。

2 痙攣性便秘

副交感神経が優位になると腸の動きが良くなりますが、ストレスなどで自律神経のバランスが乱れると、腸管が緊張・痙攣し、便をうまく運べなくなり、ウサギのフンのようにコロコロになります。

3 直調性便秘

便意を習慣的に我慢していると、神経の感度が鈍って直腸に便が入っても便意をもよおさなくなり直腸に便が停滞する状態。女性の便秘に多い理由の一つです。高齢者や寝たきりの人にも多いのが特徴です。

便の通過が妨げられる「器質性便秘」

大腸がんや手術後の癒着、炎症性疾患などのために大腸の中を便がスムーズに通過できずに起こる便秘です。原因になっている病気を治療することが必要です。血便や激しい腹痛、嘔吐などがある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

このほか、甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢進症などの病気の症状として起こる「症状性便秘」、抗うつ薬、抗コリン薬、咳止めなどの副作用で便秘になる「薬剤性便秘」があります。

生活リズムと食事で便秘を改善する

便秘は大腸のトラブルによって起こるので、大腸を健康にすることで改善することができます。「腸はリズムを大切にする臓器」だということが重要です。旅行などで便秘になるのは、普段の生活環境と食事や睡眠の時間が変わるため、体内リズムが乱れてしまうからです。普段から不規則な生活をしていると、腸のリズムが乱れて働きが弱まってしまいます。

生活リズムを整える

食事や就寝、起床時間を一定にする。ストレスは自律神経のバランスを乱すので、ストレスを溜めないように規則正しい生活を心がけましょう。

毎日少しでも運動を

多くの便秘は運動不足から起こります。体力や筋力が低下したことが原因の弛緩性便秘の人は、毎日少しだずつでも体を動かす習慣を取り入れると、症状を改善しやすくなります。ウォーキング、水泳、ラジオ体操、ヨガ、腹筋運動など、無理のない範囲で始めてみましょう。

食生活の見直しをする

毎日同じ時間に3食バランス良く食事をとって、腸のリズムを整えましょう。特に朝食を抜くと胃腸の働きが鈍くなり、便秘を起こしやすくなります。穀物、芋類、豆類、果物、海藻類など食物繊維を豊富に含んだ食品と、こまめに水分を摂るようにしましょう。1日に食物繊維(25g)を摂ったうえで、水分(約2リットル)を摂ると、排便回数が増加することがわかっています。
ただし、重度の便秘の人が不溶性食物繊維を多く含む食材を摂りすぎると、さらにひどい便秘を引き起こすことがあるので、注意が必要です。朝、白湯をコップ1杯飲む習慣をつけると、内臓が温まり、腸が目覚めてぜん動運動が活発になるのでオススメです。

「腸活」は下記の記事も参考にしてください。
コラム:その不調は、腸の老化が原因かも・・・

改善方法を実践しても効果が感じられない方、薬を試したいけどどれが良いか分からない、そのほか気になる症状がある場合などは、ヨクミルで相談してください。

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監修者プロフィール
相談科:
  • 内科
  • 総合診療科
専門領域:
  • 消化器内科
佐藤さとう 元一もとかず先生
アメリカ在住。消化器系の検査と癌の治療と、風邪などの内科的な疾患から、腹痛や下痢嘔吐などの消化器疾患の経験が豊富です。オンライン上のかかりつけ医の様な存在として、気になる症状から検診結果や治療の不安、薬の疑問なども相談してください。
著者アイコン 著者プロフィール
中野なかの 紗瑛さえ
文具メーカーでプロダクトマネージャーを担当後、システム開発販売会社で販売促進やイベント企画を経験。その後、フリーのプランナー・コピーライターとして、商品企画と販売促進全般、店舗、経営者、政治家、医者などの取材、ライティングを数多く手がける。2021年より、YOKUMIRU株式会社のブランディングマネージャーに就任。医療、健康、美容、飲食系のライティングを得意としている。
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