声は見た目と同じくらい人の印象を左右します。リアルで人と会う機会が減り、マスク生活が長く続いたことなどが原因で、都内の病院では声の不調で受診する人が、コロナ前より3割増えたそうです。声がかすれる、うまく声が出せないなど、声の老化を感じている人も多いと思います。そこで今回は、声を出す仕組みと、いつまでも若々しい声を出すアンチエイジング法について、専門医に解説してもらいました。
声を出す仕組みと老化の原因
軟骨で囲まれた喉頭は、空気が出入りする管のようなもので、肺につながっています。喉頭の内側に、筋肉と粘膜でできた左右に開閉する器官「声帯」があります。声を出すときは、この声帯が動いて管の真ん中で接触し、その間を空気がすり抜けて、声帯の粘膜が振動することで声が出ます。
身体の筋力が衰えるように、加齢によって声帯の筋肉が衰えること、肺活量の減少や喉の乾燥などが原因で声が老化します。女性は更年期以降、女性ホルモンの分泌量が減るので、声帯がむくんで太くなるため声が低くなります。男性の場合は、声帯の筋肉が萎縮して硬くなり、声が高くなる傾向があります。
そのほかの原因は、声を使っていないと筋肉が衰えて萎縮が進みます。SNSやメッセージツールなどでコミュニケーションをする若い世代にも、声帯筋の衰えが増えています。猫背やうつむいて話す人は、肺から出る空気を遮るので、こもった声になります。また、糖質・脂質の多い食事、カフェインやアルコールやタバコが多いと声帯を痛めます。
声の老化をチェックしてみましょう
声帯は喉仏のあたりにあって、収縮に富んだ粘膜と筋肉でできています。声帯がどのくらい老化しているのか、セルフチェックしてみましょう。
□ 声がかすれることがよくある
□ 人から声が変わったと言われる
□ 昔と同じキーで歌えなくなった
□ 滑舌が悪くなった気がする
□ 「あー」とひと息で、12秒以上出し続けられない
2つ以上当てはまる人は、声の老化が進んでいる可能性があります。
声帯の老化は全身にも影響がある!
声帯が衰えると、良い声が出なくなること以外にも様々な影響があります。声帯がしっかり閉じないと体に力を入れにくく、ペットボトルの蓋が開けにくくなったり、つまずいた時に踏ん張れなくなったりします。人は体に力を入れるには、無意識に息をこらえて肺をパンパンにして上体を安定させます。声帯が閉じないと空気が漏れて、力が入りにくくなるのです。
そして、声帯は気管の入り口にあるため、しっかり閉じないと唾液や食べ物などの食道に入るべきものが気管に入りやすくなり、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなります。また声が出にくいと話さなくなるため、コミュニケーションが減り、認知機能が低下しやすくなるため認知症のリスクが高くなります。
声の老化を防ぐアンチエイジング法
声を出す筋肉を鍛えることで、声の老化を改善・予防ができます。
息こらえトレーニング
声帯のたるみを予防すると、ハリのある若々しい声になるだけでなく、顔まわりがシャープになる効果も期待できます。
① 胸の前で手を組み、大きく息を吸う
② 両手を左右に引っ張りながら、5秒間息を止める(苦しいなら3秒でも)
③ 力を抜いてゆっくり息を吐く
5〜10回ワンセットで、朝昼晩行う。無理のない範囲で毎日続けましょう。
毎日の習慣で老け声予防
声の老化を防ぐために、下記のような生活習慣を心がけましょう。
① よく話す・歌う
体の筋肉と同じで声帯も適度に使うことで鍛えられます。積極的に人と話し、歌を歌いましょう。人と会う機会の少ない人は、本などの音読するのもおすすめです。笑顔になると表情筋を使うので、笑顔で話すと声にハリが出ます。
② 声帯を酷使しない
長時間のおしゃべりや大声を出す、無理な音域で話したり歌ったりすると声帯に負担をかけます。姿勢が悪いと、顎が突き出て口が開きやすくなるので、口が乾きやすく口呼吸になりやすいので、姿勢を正して肺と声帯をまっすぐに保ちましょう。
③ 喉の乾燥を防ぐ
喉の乾燥は声帯を痛める原因になりますので、マスクや加湿器で喉の潤いを保ちましょう。水やお茶で水分補給をこまめに行い、喉の乾燥を防ぎましょう。
声の不調に潜んでいる危険な病気
大きな声を出したり、話し続けたりして声帯を酷使すると、声帯ポリープになることもあります。それ以外にも声がかれる原因には、声帯がん(喉頭がん)の場合もあります。また、声が震えたり、高くなったり低くなったり不安的な時は、心肺機能の低下、脳神経の病気、肺がんや食道がんの可能性もありますので、気になることがある方は、早めにヨクミルでご相談ください。