初めての海外は不安がいっぱい…?!ベトナム生活のはじめ方

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ベトナムで暮らすための気候や地域性などの基本情報から医療事情、病気や怪我したときの注意事項などを紹介しています。

ベトナムの基本情報

気候と環境 南北での違いと大気汚染問題

ベトナムは南北に国土が長く、国境部分には山岳部が多いため、気候の変化に富んでいます。北部は温帯夏雨気候で四季が存在し、中部は熱帯モンスーン気候で8月から1月に降雨量が多いです。8月から9月にかけては最高気温が常に30度を超える猛暑が続きます。また、偏西風の影響で台風が多いのも特徴です。南部は1年中暑いサバンナ気候に属し、5から10月の雨季と11月から4月の乾季に分かれています。
道路や下水道などのインフラは今でも未整備で、スコールの後は冠水が起こり、感染症が流行する原因です。また以前からハノイを含むベトナム北部を中心に、健康障害を起こすほどの大気汚染の発生が問題となっており、近年だんだんと悪化しています。

ビジネス環境 日本との文化の違いにストレス

ベトナムの正式名称はベトナム社会主義共和国といい、社会主義共和制国家です。1986年以降は、社会主義型市場経済を目指すドイモイ(刷新)政策を導入しています。近年の経済成長率は目覚ましく、外国直接投資も高水準を維持しています。政治的にも安定し、2020年の時点でもっとも親日的な国の1つです。
現地の仕事では、ベトナム人とのやりとりを避けることができません。その中でコミュニケーションや、働きかたの違いなどによる困難を感じることがあります。これらのストレスに加え日本人の数が少なく、周囲に日本人が1人もいない環境で働く場合もあります。その結果個人当たりの業務負担量や責任の増加、人間関係の軋轢が生じることがあります。日本との法令や文化の違い、「誰にお願いすれば誰が動く」、「特殊ルートで根回しをすれば認可が下りやすくなる」というような、人治主義的なやりとりも悩みの種です。
このほかにもハノイやホーチミンなどの都市部の郊外には、日本企業が入っている工業団地が多数存在しています。その周辺の生活環境は、まだまだ日本人が住めるほどには整っていません。このため、便利な都市部に居を構える人も多くなります。早朝暗いうちから職場に向かう生活になるため、慢性的な睡眠不足や過労に悩まされることもあります。こういった労働環境がメンタルヘルスに大きな影響を及ぼします。

情報が浸透しにくい邦人社会

2018年のベトナムには、2万2,125人(前年+28.1%)の在留邦人が住んでいて、国別では14位でした。現在多くの日本企業が進出しています。ホーチミン市の日本商工会議所の会員数は、2019年3月時点で1,022社に達し、上海とバンコクに次ぐ世界第3位の規模です。首都ハノイの商工会議所の会員数も、2019年10月1日時点で753社に達し、日本企業の活動は急激に活発化しています。
ベトナムには日本人会のような包括的な組織が存在しないため、商工会議所が年に数回、健康や安全などについて教育・啓蒙をおこないます。しかし会員企業に限定されているため、邦人社会全体に正確な情報が行きわたりづらい構造があります。
企業や医療機関が、日本語情報誌やSNSなどに掲載する健康や医療に関する広告は、営利目的で内容が不正確であったり、時に危険な行為を勧めていたりすることもあるので注意が必要です。

外国人が集まる都市は注意も必要

ハノイやホーチミンなどの主要都市には、日本人街と呼ばれる地域や日本人入居率の高いサービスアパートメントなどが点在しています。例えばホーチミンに昔からある、日本人街のレタントンと呼ばれるエリアがあります。深夜まで営業しているレストランや飲み屋、カラオケバーが多数存在し、日本人労働者が集まって食事を楽しんだり情報交換をしたりしています。また接待などにもよく使われます。
英語が通じる外国人街として有名なのは、ホーチミンのブイビエンで、バックパッカー用のホステルやゲストハウスも多数存在します。多くの人が行き交い、いろいろな国の料理も楽しむことができ、英語でコミュニケーションをとることが可能です。ただし麻薬や覚せい剤、笑気ガス(バルーン)といった違法薬物を提供する店も多数存在し、時々一斉検挙されています。また外国人を狙ったスリやぼったくりなども多いエリアです。

ベトナムの医療事情

ベトナムでは日本と比較して外傷、感染性疾患、妊娠・出産、栄養不良を原因とする死亡が多いといわれています。また、WHOの報告では、全世界の死亡の原因の71%(4,100万人)をNon Communicable Diseases(NCDs)が占めるとされています。NCDsとは循環器疾患・がん・糖尿病・慢性呼吸器疾患などの非感染性疾患の総称で、日本では生活習慣病と呼ばれます。
NCDsが原因で死亡する人のうち、1,500万人が30歳から69歳の間の比較的若い年齢で、このうちの85%以上が、ベトナムのような低中所得国で発生します。WHOの出したベトナムに関する報告では、NCDsによる死亡は77%と高く、国を挙げての対策が始まっています。

健康や安全のリスクの違いを知って危機管理を!

国ごとの5歳未満児死亡率の比較をすることで、医療レベルの違いを知ることができます。日本では3人/1,000人であるのに対して、ベトナムは21人/1,000人で、医療レベルに大きな差があることがわかります。このような状況を理解できていないため、十分な危機管理対策をしていない企業や労働者は少なくありません。また数は少ないのですが、ベトナムで出産を敢行する人までいます。医療機関選びを間違うと、基本的な妊婦健診や検査すらしないこともあるので注意が必要です。

以下の項目が、企業や労働者が把握すべき、基本的なリスクです。

① 都市部と郊外の格差が大きい医療的リスク

i.ベトナムの医療レベルは全体的に不十分な上、主要都市と地方では大きな隔たりがあります。ハノイ、ホーチミン、ダナンなどの主要都市部なら比較的レベルが高く、英語や日本語が通じる医療機関もありますが、工業団地が多い郊外では英語が通じるところすら少ないのが現状です。

ii.内視鏡や生検などの侵襲的な検査や、中程度から重篤な疾病の治療が必要な場合には、近隣の医療最適地(都市部の医療機関、場合によってはタイやシンガポール、日本など)の医療機関の受診を検討する必要があります。

iii.街中の薬局で流通している薬の質にも問題があることがあります。

 ② 軽犯罪に注意!治安に関するリスク

殺人などの重大犯罪は少なく、人種や宗教、政治的には安定しており、テロが起きることなどは比較的稀です。しかしバイクを使ったひったくりや当て逃げ、置き引き程度の犯罪はよく起こります。

 ③ 観光客が狙われやすい!交通のリスク

i.通常交通ルールが守られておらず、2018年の報告では10万人中26.1人が交通事故で死亡するという、リスクの高い地域です。

ii.質の悪いタクシーが現地の事情に疎い観光客を狙っていて、不当な金額を請求されたり、危害を加えられたりすることがあります。またバスなどの公共交通機関の整備も不十分で、不衛生であったり、車中でスリ被害に遭ったりすることもあります。 

④ 水質汚染と大気汚染に注意!環境によるリスク

感染性腸炎、寄生虫感染症などの原因となる水質汚染や、虚血性心疾患、脳卒中、肺がんなど致死的疾患の原因となる大気汚染などが問題となっています。特に大気汚染については現地に住む在留邦人の間でも話題になっています。

日本とベトナムの医療の違い

① 全体的にレベルが低い医療職

2016年時点で人口1,000人に対して、医師の数は0.82人(2015年のOECD(経済協力開発機構)平均値は3.3人、2014年の日本は2.4人)、看護師1.43人(2014年の日本は11.24人)と深刻な人材不足です。アメリカやフランスなどの先進国に留学をして教育を受けた優秀な医師もいますが、ごく少数です。

しかもベトナムでは一定の教育期間を終えるだけで医療者の資格が取得できます。そのため医療のレベルは、日本に比べると全体的に低めです。また看護師の絶対数が不足しているため、患者に対して日本ほど細やかなケアは提供されていません。入院患者の食事介助やおむつ交換などのケアは、家族や使用人が行います。 

②日本より進んでいる医療IT

1976年に南北ベトナムが統一され、ベトナム社会主義共和国の樹立後、医療制度の整備が続いていますが、いまだ質や安全性に関して多くの課題を残しています。しかし一方で、2020年の新型コロナウィルスのパンデミックの際には、適切に水際対策や隔離を行い、他国に先んじていち早く国内の流行を抑え込み、公衆衛生分野などにおいて優秀な面を見せました。この時にあらゆる場面で活躍した医療ITに関しては、日本よりも進んでいるほどで、今後のますますの発展が期待されます。

患者治療には、診療所では十分な治療ができない重症患者を、より高度な医療設備と技術を有する高次医療施設へ紹介するレファラルシステムが採用されています。患者はこのシステムに沿って適切な医療機関を受診することで、公的医療保険制度による医療費の補助を受けることができる仕組みです。

適切な医療が提供されていない!医療の問題点

① 有名大病院は大混雑!医療制度や医療機関の問題

前述のレファラルシステムを利用せず、軽症であっても高次医療施設を受診する人が多いです。そのため有名な大病院は常に混雑し、適切な医療が提供されていないという問題があります。混雑のため1つのベッドを複数の患者が使っていたり、廊下のストレッチャーに寝かされていたり、男女が同じ病室を共同で利用していたりと、日本の病院の様子と大きく違います。

安全や衛生管理も不十分で、医療機器の滅菌や消毒が不適切だったり、経費削減のため使い捨ての器具を再利用したりしています。検査や治療に関する説明も、日本と比べると十分とは言えません。ほかにも輸血製剤を介して、ウィルスやマラリアの感染が起こることもあるため、よほどの緊急事態などの場合を除き、内視鏡治療や手術など侵襲的な処置を受けることはお勧めできません。

②抗生物質が乱用!治療に関する問題

感染症だけをみても多くの問題があります。街中の薬局で処方箋がなくても抗生物質などの薬品を購入することができ、AMR(AntimicrobialResistance:薬剤耐性)対策に関する教育も遅れています。そのため抗生物質が乱用され、さまざまな問題が生じています。

例えば、抗生物質の効きづらい多剤耐性結核菌の発生率は日本と大差がります。日本では0.45人/10万人であるのに対して、ベトナムは7人/10万人です。ここに衛生環境の違いや、医療体制の違いによる問題なども加わって、ベトナムにおける結核による死亡率は日本の約5.8倍にもなります。

 

中島敏彦先生「グローバル人材に必要なヘルスリテラシー 今注目のベトナムを事例に学ぶ」より抜粋

ヨクミル相談医師 中島敏彦先生 総合診療科、泌尿器科、緩和医療

ベトナムで総合診療医として働きながら、産業医の立場から海外進出企業向けに健康やメンタルヘルスのリスクに関する講演活動も行っています。2013年から総合診療医としてシンガポール、中国、ベトナムで日本人駐在員の診療を行なってきました。海外で個人が遭遇する健康に関する問題や、企業としての出張者や駐在員の健康問題をどう扱うかについてのご質問等にお答えすることが可能です。ヨクミルでお気軽に相談してください。

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